ろぐ | ナノ
俺の彼女はツンデレだ。それも超ド級の、ツンとデレの比率が9.5対0.5くらいの。


「あれ、桃乃来てたのか」

『こんな時間まで寝てるなんて相変わらずグータラしてるね』

「ほっとけ。それより今日は何しに来たんだよ、約束してたのは明日だろ?」

『別に。暇だから来ただけ。用もなくあたしが来ちゃダメなわけ?』

「いや、まさか銀さんに会いたくなって来たのかなーとか思っちゃいまして、」

『んなわけねーだろ腐れ天パ』


こんな痛烈な言葉も遠回しな愛情表現って俺は知ってる。え?ただ冷たいだけなんじゃないかって?それはツンデレとは呼ばねえって?いやいや、そう思った君はまだまだケツの青いガキだ。だってさ、こいつすんげー分かりやすいんだ。こんなに毒吐くの 俺しかいねえんだぜ?他のきたねー男共にはいたって普通なわけよ。彼氏の俺にだけツンツンするって、それはもうデレてるだろ。


『銀ちゃん』

「んあ?」


洗面所で洗った顔をタオルで拭いていたところに、桃乃がやってきた。鋭い目と鏡越しに目が合う。


『今日さ』

「おう」

『なんであたしが万事屋に来たかわかる』


疑問というよりも独り言のようなそれ。わかる、って言われても。


「暇だからじゃなかったっけ?」

『違うよ当てろよバカ』

「…んー、あー……わかんね」

『……』

「…ご、ごめんなさい」

『たんじょーび、』

「え?」

『誕生日おめでとう』


蚊のなくようなとはまさにこのことってくらいに小さな声。でもそれでも俺は聞き取ってみせた。意外と低い、ハスキーがかったこいつの声を。

……のはいいのだが、いかんせんその言葉の意味があまりにも簡単でだからこそ頭がついていかなくて。


「……え、ちょ、桃乃ちゃん?いまなんて?」

『も、もう言わないからっ』

「いやいや桃乃ちゃん、もう一回言ってくれよ」

『知らない!さっさとそのぼっさぼさな髪直して朝ごはん食べなさいよ!カップヌードル作っといたから!』


そう言って桃乃は洗面所から出ていった。真っ赤な顔して何可愛いこと言ってんだ アイツ。やべ、こんな時間にムラっときちまった。


「(落ち着けよ俺…調子に乗ったら怒られる)……ん?」


朝ごはんの定位置に着くとちょこんと置かれたカップヌードル。ふたの上に"ハッピーバースデー 銀ちゃん"って書かれたピンクのハート型の紙が貼られてた。……可愛いことするよな、ほんと。


「桃乃ー」


恥ずかしいのかこっちにはこないあいつを呼ぶ。返事はない。


「誕生日プレゼントはお前?」


からかうように問いかける。今度の返事はガタガタって音だった。



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111010//銀ちゃんハッピーバースデー!おめでとう
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