ろぐ | ナノ
愛しい人がいます。とってもとっても大切な人です。今日はその人との生活について話しましょうか。そうですね、たいした話はありませんよ?ああ、もちろん私からしてみればどれも大事なことなんですけど、人様が聞いて驚いたり興奮するような話はないってことです。それでも、聞きますか?

…私たち、実は同じ名字なんですよ。血の繋がりがある者同士とかじゃなく。…はい、そうです、ちょっと照れくさいんですが夫婦ってやつです。え?プロポーズの言葉?…えーと…あんまり言っちゃうと怒られるんですよ。照れ屋な人なんで、ごめんなさい。…あ、話がずれましたね。で、私たちの結婚生活ですが。スナックお登勢の2階、万事屋銀ちゃんが私と旦那さんの住んでるところです。神楽ちゃんっていう可愛い女の子も一緒に住んでるんですよ。あと定春くんっていうおっきなワンちゃんも。それから、新八くんがよく仕事のために来ます。「新婚早々ガキ共がいてわりーな」なんてあの人は言ってくれたけど、みんないい子だから私も大好きです。それに、みんなもあの人のことをずいぶん慕ってるみたいですしね。私もあの人の不思議な魅力に惹かれた1人なんだと思います。普段はだらけてるけど、やる時はちゃんとやってくれるんです!私が泣いてると、抱きしめてくれるし、笑ってると隣で一緒に微笑んでくれます。辛いときはあの大きな手で頭を撫でてくれたり、間違ったことをしたらハッキリ言ってくれたり。お返しできるなんて思っちゃいません。この先私が何をしたって恩を返せるわけないんです。だけど、できることならしてあげたい。それは結婚する時に誓いました。


…浮気、ですか?私はあの人のことをもちろん信じてますけど、正直わかりませんね。少しだけ(いやかなり?)女の人にだらしないところがありますから。って言っても、今のところは大丈夫だと思いますけどね。だけど本当にあの人が浮気した時は、気づかないフリをしようと思うんです。口にしてしまえば、大好きなあの人を責める言葉しか出てこない気がして。それが辛いから、やめときます。きっとその時の私は悔しくて悔しくて、「仕返しに私もしてやろう」って思うんでしょうね。だけど結局、できないんです。私が好きなのはあの人だけですから。


…子供。考えたことなかった、と言えば嘘になっちゃいます。そりゃあ、愛しい人との子供は女なら誰でも想像するでしょう?…そうだなぁ、私は、彼によく似た人になってほしいなぁ。男の子でも女の子でも、心の真っ直ぐな人に。みんなを幸せにできるような人に。たくさんの人に愛されるような人に。人と人との繋がりを大切にする人に。護りたいものを護れる人に。…そんな子がいいです。外見?…くるくるパーマ、なんてどうですか?銀色の、ふわふわした髪をなびかせてお父さんと並ぶところを見たいなぁ。そんなふうに彼に言ったら、「お前に天パの苦しみはわかんねーよ。俺は必ず自分のガキにこの忌まわしき遺伝子はやらねぇ!」なんて言われちゃいましたけど(遺伝子って…)。


「銀さん、神楽ちゃんと新八くんは?定春くんもいませんよ」
「珍しく気ィ利かせて出てったな。今日はお妙んとこに泊まるんだと」
「そうなんですか。…ふたりきりってやっぱり緊張します」
「おいおい、旦那相手に嫁さんが何言ってんだよ」


私、これと言った特徴がないんです。特別可愛いわけでも美人なわけでも、スタイルがいいわけでもないし、頭だって運動神経だって普通です。料理も最近やっと人並みになってきたくらいだし、裁縫もとても得意とは言えません。自慢できるようなことなんてないけど、ただ一つ。自信を持って言えることがあります。私には、男の人を見る目があると。


この人はきっとずっと私を愛してくれます。喧嘩したって子供な私の代わりに先に謝ってくれるだろうし、寂しがりな私のそばにいてくれます。しわしわのおばあちゃんになったって、変わることのない愛を向けてくれる気がします。…そんな気がするんです。いつ付き合ったとか、初めてチューした場所とか、結婚記念日とか、すぐに忘れちゃう人だけど。私の誕生日だけは必ず、覚えててくれる人だから。



「…大切にされてますもんね?」
「あ?いきなりなに」
「銀さん、私のこと、好きですか?」
「愛してるっつの」
「…さらっと言いましたね」
「…言ってから恥ずかしくなったんだよ、悪いか」



愛しい人がいます。誰よりも、世界でいちばん大切な人。私はこれからもこの人を愛し続けます。


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110622//愛しい人がいます
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