「折原臨也と、折原莉子」 絶対に敵に回してはいけない人間に臨也やシズちゃんやサイモンの名前が挙がってる時点でそれはガチなものだとわかる。だけどそこにまさか自分の名前まで挙がっているなんて、23歳の私は知っているのだろうか。 「なんでも双子らしくてさ。兄貴の折原臨也の方はマジでヤバいから絶対関わんない方がいいっすよ。まあ新宿主体の人だから会うこともないと思うんすけど」 絶対関わんない方がいいなんて言われても、私の場合生まれた瞬間…いやいや生まれる前から関わりあるんだよなぁ。ずっと一緒に育ってきたよ。私の一番だし、アイツの一番は私だよ。 …言えないけど。 「で、もう一人が妹の折原莉子。莉子先輩同じ名前でちょっとびっくりしたけどよく考えたら双子なのに来良の2年じゃ辻褄合いませんよね」 まあ実際辻褄合わないことが起こって7年前から私はやってきたわけだけどね。 適当に笑ってごまかしながら正臣くんの話を聞く。 「本人自体はそこまでヤバい噂は聞かないんすけど…周りの連中が」 『周りの連中?』 「折原臨也はもちろん、池袋最強の平和島静雄やサイモン、ダラーズの顔って言われてる門田京平さんやその仲間、あと闇医者に首無しライダー…」 うっひゃあ知り合いばっか。ドタチンの仲間は知らないなぁ、そんなのいるんだ。なんだか楽しそうにやってるんだね。 「とにかく折原莉子に手ェ出したときの代償はシャレになんねーって裏じゃ有名っすよ」 『き、気をつけるよ』 裏ってなんすか。怖い。自分が。 「まあ俺も莉子さんとは面識あるんすけど……そーいや莉子先輩に似てるよなぁ」 じーっと正臣くんが私を見る。赤い目をした日本人なんて珍しいだろうし、気づかれないか不安でドキドキした。 「折原臨也は苦手だけど、莉子さんはすっげーいい人で優しいんです。何より美人!」 「僕もこないだ話したよ」 ハハハ…そらどーも。 わたしがその絶対に敵に回してはいけない人間とかいうおっかない部類に入ってしまったのはもう折原臨也と双子という時点で決まってたのかもしれない。いったい7年後の私はどうやって過ごしているんだろう。 『…正臣くん、帝人くん』 「はい?」 「なんですか?」 『その折原莉子って人は、楽しそう?』 そう問いかけたら、2人は一瞬目を丸くさせた。そしてまるで何かを思い出すように上を見上げ、ぷっと吹き出して笑い始める。 「すっげー楽しそう!っす!」 「誰よりね!」 …ふーん。楽しそうなら何よりだよ、23歳の私。 (楽しさがあれば生きていける気がするんだよねぇ、私) back |