双子ラプソディー | ナノ



私たちは今池袋を練り歩いていた。それは正臣くん(紀田くんと呼んでいたが何度も正臣でいいと言われたので折れた)が池袋にはこんなにもいいところがある、と自慢げに言うのでついてきたから。ちなみに帝人くん(竜ヶ峰くんはいくらなんでも長すぎるので即決)(正臣くんはそこでもブーブー文句言ってた)もそれには賛同していた。確かに少しは変わっているけどほとんど私の知ってる池袋なのだけれど、まあそこは彼らの優しさを尊重しよう。2人に案内されながらある程度の買い物を終わらせ始めていたとき、なぜか「絶対に敵に回してはいけない人間」という話になった。


『何それ?敵に回しちゃダメな人?』

「莉子先輩、もしかしてこっち来たばっか?」

『んー…まあね』


一応そういうことになるよね。


「いるんですよ、"そういう"人間が」

『へえー』

「まずはこの俺!」

『あっそ』

「うわあ…そのネタまだ使ってたんだ…しかも莉子先輩冷たい」

『あまりにくだらなくて』

「パリーンって。俺のハートがパリーンって」


さっき帝人くんがこっそり正臣くんは時々くだらないギャグを言うと教えてくれたけど、このことだったのか。なるほどたしかにくだらない。つーかしょーもないね。


「ま、マジな話で行くと──サイモンは温厚だからいいんすけど、問題は平和島静雄」


そこで思わぬ友人の名を聞き私は思わず『へっ』なんて間抜けな声を出してしまった。平和島静雄……それってほぼ間違いなくシズちゃんのこと、だよね。


「金髪にバーテン服で目立ちますから、見かけたらすぐ逃げるのが一番っす」

『(間違いねーよ)…そ、そんなヤバいの』

「池袋最強とか自動喧嘩人形とか……ま、普通に生きてたら関わらないような人ですけどね」


ものすごく関わってる私は今までいったいどんな生き方をしていたのだろう。むしろ普通って何ですか。私の普通は普通じゃないんですか。


「あともう一人……いや、二人か」


正臣くんの顔にわずかに影が出来たのは気のせいだろうか。それにしても嫌な予感がするなぁ。サイモンに関しても、彼はよくアイツとシズちゃんの喧嘩を止めてたから顔馴染みだ。この流れからいくと、どうしても正臣くんが次に言うであろう人物が予想できてしまった。


「折原臨也と、折原莉子」


…マジでアイツいつか刺されるんじゃないかな。そしてあとに聞こえたその聞き覚えのありすぎる名前は、わたしの空耳だと真剣に願ってもいいですか。


(正臣くんやたら嫌な顔してるし)(絶対臨也なんかやらかしたんだ……)





 

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