7年経てば街どころか人間もずいぶん変わることを私折原莉子、身を持って体験しました。まず携帯の薄さに驚いた。つーかそれもう全部画面じゃないですか?スライドどころの騒ぎじゃねーよどうやってメール打つのさ! 『(臨也もなんだか大人っぽくなってたし……)』 いくら双子の兄とはいえ、七つも年上だと少し接し方に困る。敬語を使うべきなのかとか(さっきは使わなかったけど)、呼び捨てにしてもいいのかとか(さっきは呼び捨てにしたけど)、とにかくどうすればいいのか迷うのだ。そういえば相変わらずかっこいいのは認めるが中二病は現在だったなぁ。 『ま、今は買い物楽しもーっと』 せっかくわざわざ新宿から池袋に来たわけだし。やっぱり私はここが好きだよ、親しみ深いというかなんというか。 ………、…。 ザワザワ… 『………』 ザワザワ… 『………』 臨也連れてきたらよかった…。思ったより寂しい…。知らない街ってか知らない世界にひとりぼっちで取り残された気分だ…!今からでも電話していいかな…って私今の臨也の番号知らない!しかも携帯もない! 『(ど、どうしよう)』 オロオロとしてる私はこの池袋でかなり挙動不審な女子高生だろう。周囲を歩く人々はちらりとこっちを見るだけですぐに何もなかったかのように歩き去る。こういうところは変わってねー!さすがIKEBUKUROだ! 「おーっと!困ってる美しいお姉さん発見!」 あまりに突然、その声は聞こえてきた。明るくはっきりとしたそれに多少気になりはしたがどうせどこかの美人さんへのナンパだろうと振り向かなかった。それより私は早く買い物を…。 「ちょっとちょっと!シカトしちゃうなんてひどいなぁ!でもそういう連れないところも俺は好き!」 『うわあポジティブ』 あ、しまった。思わず声に。 口に手を当て振り向くと、その声のように明るい頭をした男の子がこっちを見ていた。 「やっとこっち見てくれた!」 「やめなよ正臣…」 「いいや何言ってんだ帝人!こんな美しい女子高生なかなかいないぞ!これはナンパしないほうが失礼だろーが!」 隣にいるのはナンパ少年とは対称的にずいぶんおとなしそうな男の子。どちらも来神高校の制服を着ている。…ふーん、ってことは彼らは実質わたしの後輩ってことか。 「その制服もしかしてお姉さんも来良っすか?」 『ライラ?来神高校だよ、私は』 「来神?」 「あれ、来神って確か来良学園の前の名前じゃ…」 不思議そうにおとなしいほうの男の子が首を傾げる。だけど私はそんなことよりとてもショックを受けていた。 ら……来神高校の名がなくなっていたなんてェェェ!来良学園!?何そのふわっとした感じの名前!来神のほうがかっこいーじゃん!何なの来良って!ちょっとインテリっぽくなってるよマジでかァァァ!! 「なんかすごいショック受けてるんだけど…」 「お姉さーん?どしたんすかー?」 『な、なんでもない……そうそう私来良学園の1年です……』 「え、マジっすか!ちょうど俺らも1年っすよ!」 「あれ、でもこんな人いたっけ…」 「確かに…俺がこんな美人を見逃すわけないしなぁ」 『ま、間違えた!2年生になったの、つい最近!』 間違ったことは言ってない…はず……うん。もうすぐ2年だし、…うん。 「なるほど先輩ですか!にしてもどっかで見たことあるよーな…」 『え?(そんなはずないよね…)』 「ま、いーや。お姉さん名前は?」 『え、あー、莉子です』 ん?ナンパ少年に名前教えてもいいんだっけ?…ま、同い年っぽいしいいか。いざとなりゃ臨也に頼るしか……いやアイツは助けてくれないよね。 「「…莉子?」」 え、なになに2人そろって。莉子なんてそんな珍しい名前じゃないけど。そりゃあ来神でなら私の外見から嫌でもあの性悪を思い出すだろうけど、さすがに7年経てば臨也のこと知らないだろうしさぁ。 「(…まさかな)」 『ところで少年たち、私はそろそろ買い物に行くからサヨナラしてもいいかな』 「え、あっ、案内しますよ!」 「帝人!?」 『?』 「なんかさっき困ってたみたいですし…」 そう言われて私はうーんと考えた。悪い子たちには見えない。別になんにもあやしくないんだろうし、実際少し困っていたからここはお言葉に甘えるとするかな。 『じゃあ、よろしく』 「(うわ、笑った顔、)」 「(ほんとに美人なんだなぁ…)」 こうして私のお買い物は始まった。 ─────────── 帝人が案内しましょうかって言ったのは莉子から何かしら非日常てきな要素が感じられたから。ついそれにつられて言っちゃった!みたいな。正臣てきには第六感が働いてる。「(なんかこの人…うーん、美人だけどなんか……なんだこれ!)」とかいうかんじ。でも結局流されていつものナンパ少年に戻る。 back |