「ところで莉子はこれからどうするの?」 『え?』 「帰り方、わかるの?」 『…わかってたらとっくに帰ってるよ』 新羅の言うとおり、私には7年前の世界に帰れる術がない。とても困る、これからどうすればいいんだ…。 『まず住むとこは私の家でいいとして、』 「部屋ないよ」 『え?』 「俺も莉子も一人暮らしだから俺たちの部屋は荷物置きにされてる」 『ま、まじか』 ……ん?待てよ、それならこっちの世界にいる私、つまり7年後の折原莉子に事情を説明して帰れるまでの間泊めてもらえばいいんじゃない?そうだそうだ、7年後と言えど私なんだから気を遣う必要もない!天才じゃん! 『臨也、7年後の私に電話して!』 「別にいいけど…なんか16歳の莉子に命令されるのって癪にさわるなぁ…」 臨也が小言を言いながら携帯で素早く大人の私へとコールを鳴らす。シズちゃんは私のことをペットか何かと勘違いしているのだろうか、ソファーに座りながら私の髪の毛でずっと遊んでいる。私がソファーの前の床に座ってからずっとこの調子だ。 「───出ない」 『出ない?仕事中?』 「そういうことだろうね」 「莉子今日休みって言ってたよ?」 《ああ、確かに嬉しそうに言っていたな》 「……」 「ってか僕思ったんだけどさ、莉子と莉子は入れ替わったんじゃない?」 『い…入れ替わったあ?』 《7年後の莉子と7年前の莉子が?》 「うん。そうじゃないと一つの世界に同じ人間が存在するなんて、いくらなんでもおかしすぎるだろう?」 私がこっちへ来る時点で おかしすぎる話だ。もうそんなに驚きはしない。周りの人間がこうも変人ばかりだと順応性というものが必要になってくることは不可欠。 《それなら莉子は臨也の家に住んだ方がいいんじゃないのか?》 『え?』 《臨也なら双子の兄だし平気だろう》 『い、臨也の家……』 部屋なら腐るほど見てきたけど、家となったらさすがに好奇心が膨らむ。…いいのかな、臨也の家に住み着いてもいいのかな! 「……なんか視線が痛いんだけど」 『臨也、いい?』 「…はぁ。元の世界に帰るまでだからな」 『はーい!』 こうして私と7年後つまり23歳の臨也との生活が始まった。 back |