双子ラプソディー | ナノ



『あれ、無い』



私の部屋からマンガが消えた。いっいざやァァァ!あれほど勝手に持っていくなと言ったのにィィィ!おのれ私のプリーチを!



『たァのもォォ!』



バン!あれ?いねえ‥‥。あの野郎どこ行った!まあいい、勝手に探らせていただこう。あ、こーゆーときってアレだよね、兄弟の部屋からエロ本発見するパターン。ようし見つけてやろう!そんで臨也にプリン買ってこさせよう!いつもアイツばっかり弱味を握っててずるい。



『(どんな好みかなーSMとかだったらかなり引く)』



臨也ならあり得る。ドSだし、いや変態だからドH?あれなんか臨也がすごいえろい奴みたいだ。ごめんドHはさすがに言い過ぎた。



『つーかエロ本無いし。まさかアイツこの年でまだエロ本見たこと無いんじゃ…!うわあああどうしよう欲求不満で私が襲われたりしたら!』

「どんだけ理性ブッ飛んでてもそれだけは無い」

『イラッときた。私も臨也だけは嫌だてゆーかいつからいたのかなぁ臨也くん』



「莉子が部屋に入ったらへん」『はやい』「ってかいきなり後ろ立ってたんだからもっと驚いてよ」『いやごめんなれた』「つまんない」なれるよそりゃあ。臨也そればっかするし。最初はすごい反応よかったのにと文句言う臨也がボフッとベッドに後ろ向きで飛び乗った。本棚を見れば小難しそうな本の間に私のプリーチが数巻挟まってた。おかえりマイエンジェルちゃん!



『勝手に持ってかないでって言ったじゃん』

「別にいいだろ」

『あ、音楽聞くなてめえっ』

「ちょ、返せ」

『だいたいあんたが………、何これ』

「?ああそれ。手紙」

『いやわかるよ。じゃなくて、この…お菓子?』



臨也が彼の取りまきの女の子たちからの手紙(またの名をラブレター)を読まずに捨てるという最低行為をしてるのは知ってる。初めて見たのは中1で、さすがに我が双子ながら心底嫌な奴なんだと再確認したのを覚えてる。だけどお菓子を捨ててるとこは見たことなかった。



「手作りケーキ、らしいよ」

『え、手作り…!?もったいない!なんで捨てるのよ!』

「手作りなんて何が入ってるのかわからないのに食べるわけないだろ」

『でも……』

「なら莉子食べる?捨てたのは昨日だけど」

『……』



臨也にはちょっと足りないところがある。何だってこなしちゃう頭のいい臨也には人間的な性格がどこか欠けてる。だけどその欠けてるものは間違っても優しさじゃない。



『臨也!パウンドケーキ焼いたよ!』

「うわ美味しそう。いただきまーす」

『めしあがれ!』

「んまい」



だってほら、優しいでしょう。



小さな優しさ

(次はプリン食べたい)(難しいよそれ)



 

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