『12月ってさあ、師走って書くだけあってはやいよね、いろんな意味で』 「いろんな意味で?」 珍しく私の言葉に視線まで向けて返事をした臨也にこくりと頷く。 『えーと、まずアレ、来るのがはやい。気づけばもう12月じゃん』 「ああ」 『それでもうひとつは12月って過ぎるはやい』 「まあね」 『そんなことを12月上旬に言ってみました』 「ふーん」 『つまり何が言いたいかって言うと今年ももうすぐ終わるねってこと!』 それを聞いた臨也はどうでもいいよと言わんばかりの視線を送ってきた。なんだよ、さっきまでちょっと興味ありそうに聞いてたくせに。 『…もう12月かあ』 鮮やかなカレンダーを見ながら呟いた言葉に、やっぱり臨也は反応しなかった。 ♂♀ 『……う、やば』 とんでもない吐き気に襲われて私は目を覚ました。携帯で時間を確認してみれば朝の4時。…いや、外はまだ暗いから深夜と言ったほうがいいのだろうか。まあどっちでもいい。 『きもちわるい……』 寝転んだままだと吐き気は止みそうにないので上半身を持ち上げた。それでもやっぱり変わらず気分わるい。こんなの久しぶりだ…うう、マジでやばい。吐くかも…。 『…いざ、や』 臨也、臨也、いざや。 何度も片割れの名前を呼んだ。気持ちわるいよ。ああ、臨也のあの冷たい手で頬を撫でて欲しい。こんな時間に起きてるわけないって考えはまるでなかった。とにかく臨也に会いたくて。 だんだん霞んでいく視界。あ、もう寝るんだ私。寝てもいいのかなぁ、気持ちわるいんだけど…臨也、来ないなぁ。 「……莉子、」 『…いざや』 ふいに冷たいものが私の頬に触れ、意識が少しずつ戻ってくる。目の前には赤い瞳を揺らす臨也。(あ、レアな顔だ、) 「大丈夫?」 『いざや……いざや…』 どうしてかわからないけど涙があふれてきた。それは多分気分が良くならないもどかしさとか、優しい臨也の手とかいろんな意味があるんだろう。それでも今の私にそんなことを考える余裕はなかった。 『っ、しんどっ……う、きもちわるくて…えぐ、』 「落ち着いて。大丈夫だから」 臨也がベッドに座り、私の体を包み背中をさすってくれる。普段より比較的優しい声にまた臨也のシャツを濡らしてしまう。 『い、いざ、やっ…』 「うん」 『いざやっ…』 「うん」 『いざやあ…!』 「大丈夫」 何度も相槌を打つ臨也になだめられ、自然と落ち着いてきた。嗚咽もやがて止んで、吐き気もいつしかおさまっている。…やっぱり臨也はすごいなぁ。小さい頃からこいつ、魔法使いみたいな奴だったからなぁ。 「おやすみ」 きっと朝になったら、私は臨也の魔法で元気になってるんだろう。 魔法使い ──────────── 111204//風邪でしんどかったから書いた。臨也にこんなんされたら幸せだなぁ back |