『トリックオアトリート!』 いきなりなんだと言われるかもしれないが、言葉から察するに今日は10月31日つまりハロウィンだ。毎年毎年、うっかり者な私は朝ハロウィンのことを忘れている。いつものごとく過ごし、臨也にしたり顔でトリックオアトリート、と言われるのだ。近くにお菓子があるからいいものの、やっぱり毎回先に言われる私にとっちゃあまりいい気分はしない。 と いうことで。 今年こそは私が先に言ってやろう!って意気込んで早朝、まだ眠ってる臨也の上にまたがり頭まで被ってる布団を剥いで例の言葉を言ってやった。 「………」 『………』 当の言われた本人は目を開けたかと思えば頭上の時計をとり時間を確認し、また目を閉じた。 『トリックオアトリート!』 「………」 『トリックオアトリート!』 「…聞こえてるってば」 『じゃあ返事してよ!臨也チョー嫌な顔してまた寝るんだもん』 「……めんどくさ。まだ6時…」 『早起きは三文の徳だよ。ほらほら起きたまえ臨也!そして私にお菓子を寄越すかイタズラされるか選びたまえ』 「(にっこにっこしてるなこいつ…)」 私はどっちでもいいんだけどね、お菓子でもイタズラでも!普段臨也にさんざんやられてるわけだからちょうど仕返しにもなる。でもどうせならお菓子のほうが── 『…ん゛?』 あれ あれれ?なんか…立場変わってない? 『い、臨也』 「ん?」 『お菓子は…』 「ああ、うん」 どこから取り出したのか臨也は正方形のチョコレートを私の口に指ごと突っ込んだ。『んむ』なんて情けない声がほんの少しの隙間から漏れる。 「俺の口までぱっくり」 『…ひだや?(いざや?)』 「お菓子、食べたね」 『……ごくっ』 「莉子のそういうバカなとこ、嫌いじゃないけど俺の朝を邪魔したのはいただけないなぁ」 『なっ…』 「でももう目は覚めちゃったし、仕方ない。次は俺の番だ」 『俺の…?』 さっきから自分勝手に話す臨也は、私のお腹に乗ったままいまだにどかない。そろそろ重いな とか考える。つーか朝っぱらから私ら何してんの、これっていろいろオーケーなの。 「Trick or treat」 ムカつく程に綺麗な発音で臨也は言った。いやいや、あるわけないだろお菓子なんて。こっちは貰うことだけ考えて来たんだから。 『ないよ』 「ふーん、へーえ」 『?なに』 「じゃあ悪戯を選ぶわけだ」 『……、いや、選ばないけど。ぶっちゃけ私はもうお菓子貰ったから満足した』 「俺はまだ足りない」 『そんなの知らな…』 言葉の途中、次第に近づく臨也の顔に私は喋ることをやめた。え、ちょ、臨也くーん?まさか寝惚けて… 『んっ、』 臨也が顔を埋めたのは私の首筋で、何をするのかと思えばちくりとした痛みを感じた。少しきつく吸われたような、変な感覚。黒髪がふわふわくすぐったい。 「…よく似合うよ、莉子」 『な、なんなのよ…なにしたの、』 「最近妙な虫が莉子のまわりを飛んでるみたいだから、ちょうどいいかな」 『は?』 trick or treat ──────────── 111101//ハロウィンネタ!間に合わなかったけど! back |