「それじゃあ明日から夏休みだが、決して気を抜かないように!」 『(よっしゃァァァ夏休みだァァァ!!)』 「遊ぶのもいいが、宿題もコツコツやっていけよ!最終日まで残ってピンチで双子の兄に頼むとかもっての他だからな!」 『オイそれピンポイントじゃねーか』 うちの学年に双子私と臨也しかいねーよ。 「お前みたいに誰かに頼るなってことだ。…まあとにかく、担任の俺に迷惑がかかるようなことはすんなよ!そんじゃあ、解散!」 どこまでも適当な担任の言葉を合図に、晴れて私たちの夏休みは始まったのである。 『い、ざ、やー!』 ルンルン、そんな効果音が出そうなほどの上機嫌でスキップしながら片割れのもとへと行く。 『夏休みが始まったぞォー!』 「うん」 『夏休みが始まったぞォー!』 「そうだね」 『夏休みが始まったぞォー!』 「知ってるってば」 『夏休みが「しつこい」……臨也がノリ悪いから』 「今のお前のセリフへのノリがわかんなかったんだよ」 『今んところは同じセリフを言うんだよ。もしくはそうだなァー!って叫ぶ』 そう言うと臨也は冷めた目で私を見てため息を溢し、カバンを持ち教室から出ていってしまった。 な……なんだあの態度…! 『臨也!待ってよ、一緒に帰ろーよ!』 「……」 『な…何その顔…!そんなに嫌なのかよ…』 「…終業式の莉子はウザいくらいテンション高いから嫌」 『あっはっはー、世界一ウザい男にウザいって言われちゃった。相当ウザいんだなァ私』 「それじゃあお先に失礼します」 臨也がそう言って足を速めた。私も慌てて着いていく。 『ごめん、冗談だから!アイス食べに行こうよ!』 「俺今日用事あるんだけど」 『どうせシズちゃんからかいにいくだけでしょー!』 「違う。お礼参り」 『お…お礼参り?』 「莉子がお世話になった男に、ちょっとね。今日するって決めてたんだ」 私がお世話に…? 臨也の言い方からして相手が私に何かしらの悪いことをしたのはわかった。だけど相手が誰なのか…ってゆーかなんのことなのかはわからない。 「それじゃあ、アイスはドタチンとでも食べにいってよ」 うーんうーんと頭を抱える私の横を臨也は通りすぎる。 ………あ!思い出した!あの日のこと、か。 『臨也!』 慌てて臨也を追いかけ、学ランの裾を握った。待って、の意味をこめて。 すると臨也は少しめんどくさそうに顔だけを振り向かせた。 『思い出した、この前私が呼び出しくらった時のだよね?』 「………」 『ねえ、臨也、そんなの行かなくてもいいじゃん』 「は?」 『蹴られた時は確かにこいつら苦しめばいいって思ったけど、もうどーでもいいよ』 「俺はどうでもよくないんだけど」 『いいから!妹の私が言ってるんだから、ほっときなさい!』 「……」 『コラ、眉間にシワ寄せないの。…お礼参りなんてしてる暇があるならアイス食べに行こ!』 そう言うと、臨也はしばらく考えた様子を見せ、やがて諦めたような笑顔を作った。 「莉子の奢りな」 『な、なんで!』 終業式とお礼参り (そういえばどうして今日って決めてたの?)(終業式だと明日から夏休みって浮かれてるから、その気持ちをどん底に突き落としてやろうと思って)(…いざやにしては単純な考え、だね?) back |