双子ラプソディー | ナノ



「莉子」



今日は俺の双子の妹の話をしよう。俺の双子、と言っても似てるのは…そうだなぁ、艶やかな漆黒の髪と赤い目ぐらいだろうか。容姿を見れば確かに双子に見えないこともない。性格に関しては、まあ言わなくてもわかるはずだ。莉子と俺は似てない。



『臨也、いい加減にしてよ』

「なにが?」

『また私のプリン食べたでしょー!』

「ひどいなぁ俺を疑うなんて。食べてないって言っても信じてくれないんだろ?」

『だって実際食べてんじゃん!』

「莉子だってこないだ俺のシュークリーム食べたじゃん」

『!なんで知ってるの…!』

「隠し方が下手」



莉子は秘密が苦手だ。いや、正しくは隠すことが。聞かれなければ秘密も無かったことのように扱えるが、それを他人に聞かれるとすぐに話を変えようとする(それもモロに)。ばか正直。正にこの言葉が当てはまる。



「最悪」

『文句言ってても仕方ないじゃん!ほらじゃんけんするよっ』

「はあ…」

『最初はグー、じゃんけんぽんっ!』

「(パー)」

『(グー)』

「っよし」

『うあああ最悪だあああ』



普段は2人で徒歩だけど寝坊して間に合いそうにないときのニケツが発動。この時どっちが前でこぐかはじゃんけんで決める。例の最初にチョキを出す癖はなおったみたいだけどそれでもなぜか莉子は弱い。確実に俺が前の方が速いのになぁ、これじゃなんのためのニケツなんだか、そんなことを必死に立ちこぎする背中を見ながら思った。



「ただいまー」

『おかえりー……うわ!臨也!?』

「ん?」

『またシズちゃんと喧嘩してきたの?』

「今日のゴミ箱は更に痛かった。あれ鉄製かな」

『バカだなーほんと……ほらこっち座って、手当てしよう』

「ええー痛いの嫌なんだけど」

『ゴミ箱や自動販売機には負けるでしょ』



こうして莉子に手当てしてもらう度に俺は数年前のことを思い出す。確かあれはまだ俺たちが小学校に入学したばかりの頃、莉子が犬に追いかけられた時があった。低学年の足が犬に敵うはずもなく、噛まれそうになった寸前で俺が飛び出して、見事に腕を噛まれた(あれは本当痛かったなぁ)。


家に帰ってからどうしても自分がやるって譲らないから、手当てしてもらって。その時莉子は泣いてた。『がまんしてね』なんて言うけど、莉子は不器用だから手当てがすごくしみるんだよ。そんなことに気付きもせず消毒液を傷に染み込ませる。痛みを声には出さず、少し目を細めれば手がピタリと止まって心配そうに顔を覗きこむ莉子。『いたい…?』平気、そう言って笑うとまた涙をこぼしてこんな一言。『ごめんね』莉子のせいなんかじゃないのに。俺が勝手に飛び出しただけなのに。



「───…」

『よーしおしまい!』

「…莉子上手になったな」

『なにが?』

「手当てとか」

『当たり前じゃん!何年あんたの傷の手当てしてきたと思ってんの、まあ新羅には及ばないけどねー』



へらりと笑って『さープリン食べよう』なんて冷蔵庫へ向かう莉子。今日も俺の片割れはばか正直で、うるさくて、そして優しくて。そんな片割れである莉子が困った時はまた自分が助けてやろう、と思ったことは内緒にしておこう。



兄にとって妹とは

(莉子)(ん?)(俺莉子のこと嫌いじゃないよ)(素直じゃないなー)



 

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