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屋上にある古びたベンチ。大きく脚を広げて座り、入道雲がもくもくとわたがしを描く綺麗な空を見上げていた。やっぱり死ぬほど暑くて、足元に置いた緑茶はぬるくなっているだろう。冷たくない飲料水など、今のわたしには必要ない。つーか気持ち悪くなるだけだ。このうだるような暑さで本当に死んでしまいそうなわたし、とは反対に隣に座る臨也は涼しそうな顔して手のひらの中でルービックキューブを弄んでいた。最近のマイブームらしい。


『いいね臨也は、涼しそうで』
「暑いよ、すごく」
『いやいや汗一つかいてませんが』
「それでも暑いよ、ほんとに」


臨也はつまらなさそうにルービックキューブを弄び、カチャカチャと音をならして六色の色を揃えていく。臨也ってこういう遊び好きそうだよなーなんて横目に考えながらわたしはもう一度空に向かってため息をついた。


『何もかも投げ出したくなる時ってある?』
「何そのマンガみたいなセリフ」
『うるさいなぁ。ちょっとは真面目に答えなさいよ』
「うーん。あんまりないかな」
『へえ…』


ま、そりゃそーか。よく考えればこいつはなんでもそつなくこなすタイプだし、何事にも心を入れないような奴だから投げ出したくなることなんてない。


「何もかも投げ出したいの?」
『うん。ぜんぶぜんぶ、いらないよ。何も考えずにすむなら』
「考えるだろ、君は」
『え?』
「たとえ何もかも投げ出したって、君はまた何かにぶつかって悩むんじゃない?たとえば全てを投げ出したことに後悔するとか」
『…なんかこう、さぁ。臨也みたいになんでも涼しい顔してやり過ごしたいよ』
「俺はできることをやってるだけで、できないことはしない。つまり卑怯なんでしょ」
『それ静雄に言われたの?』
「いいや、新羅」


卑怯ねぇ。別にいいんじゃないかな。


『いいと思うよ』
「ん?」
『臨也はそれで、いいと思う』
「ひどいなぁ」
『ルービックキューブ揃った?』
「待って。今やり方思い出してるから」
『ふーん』


空にはわたがしみたいな雲がやっぱりもくもくと広がっていて、こんな時に思い出すのは夏祭りに食べたわたがしで。カチャカチャ、カチャカチャ。ルービックキューブからする音にだんだんイライラしてきた。


「何が不満なのか知らないけど、早く元気出しなよ」
『んー…』
「はい、どうぞ」


突然スカイブルーは緑に変わった。ルービックキューブがそろったようだ。なんだか重い気のする頭を立て直し綺麗に色のそろった正方形のそれを見つめる。


『ルービックキューブみたいだ』
「は?ルービックキューブだけど」
『そうじゃなくて、…世界が、これみたいだって』
「世界?」
『世界はこれみたいに難しくて、複雑で、どれかひとつをそろえようとすれば見えないどこかが崩れちゃって、わたしには臨也みたいに上手に扱えないよ』
「へえ」


薄い反応を聞き流し手のひらで色とりどりのそれをもて遊ぶ。しばらくの間黙っていた臨也は、はたと「ねえ」と呼び掛けた。


「ルービックキューブってさ、やり方なんて意外と単純なんだよ。そこまで複雑なわけじゃない」
『…そうなの?』
「例えばこの一面をそろえようとしていけば、他は崩れてるように見えるかもしれないけど実はちゃんと準備を整えてたりね」
『…何が言いたいの、結局』
「世界は君が思うより難しくないよ」
『臨也くんにとっては、ね』


それでもわたしにとっての世界は きっといつまでたっても 相容れないのだろう。


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120905/意味わかんない短編になっちゃった
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