「うう、痛い」
「……」
「痛いよーうえーん」
「……」
「もうだめだ、わたしはきっとここで死ぬんだ」
「……」
「……」
「……」
「神威くんや」
「何」
「クラスメートがこんなにも苦しんでいるんだから何か言ったらどう」
「面倒くさい」
非情極まりない言葉を投げ捨て彼はその場を立ち去ろうとした。そんな鬼の足首を思い切り掴みなんとかこの場に留まらせる。ちなみに今わたしがいるところはコンビニの前で、丸まり倒れていた。
「ちょっと離してよ」
「何があったのか聞いてくれたら話す」
「そっちの『はなす』じゃねーよバカ」
「え?」
「うわ何そのどや顔。時々思ってたけどつばきちゃんってムカつくよね」
「でさあ、わたしさあ、」
「シカトか」
「さっきこのコンビニにちまき買いにきたんだよ」
「なんでちまき」
「へへ、なんだか無性に食べたくなっちゃって。でも売ってなくてね、残念だけど帰ろうと思ったの」
「ふーん」
「そしたらさー…この自動ドアの野郎、まだわたしがいるってのに閉まりやがった!」
「へえ」
「ありえる?あろうことか、わたしを何度も何度もはさもうとしたんだよ?てかむしろ現在進行形でウインウインやられてる。信じられない」
「俺から言わせてみればその状況のままずっとはさまれ続ける君の方が信じられないや」
「いやもうまじビビるわ、日本の技術は大丈夫かね」
「お前の頭がな。それよりそろそろ退かないと店員が睨んでるよ」
「え、なんで!?」
「営業妨害以外の何物でもないからじゃないかな」
神威くんからのきつい言葉を受けながらわたしは体を起こした。相変わらず、綺麗ながら冷たく笑っている。その笑顔に向けてわたしは言った、おんぶしてと。すると彼はスカイブルーの瞳をのぞかせる。
「…なんで俺が」
「え、だってわたし動けない。このままじゃちまき買いに行けないよ」
「知らないよそんなの」
憎まれ口ばっか吐くし喧嘩だって強いし飄々としていて考えてることが本当にわかりにくい神威くんだけど、実は優しいことをわたしは知っている。だってほら、この向けられた背中が証拠でしょう?
「神威くんって優しいねー」
「勘違いしないでネ、俺もちまき食べたくなっただけだから」
「ツンデレ?」
神威くんはやっぱり面白い。
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120311//素足でかける恋慕
たまにはヒロインがボケボケなのも楽しい