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『臨也あ』


わたしの家は臨也の家のすぐそばで、歩いて5秒くらいのとこ(ちなみに走れば3秒だ)。そのくらい近所に住んでて、わたしたちがこの家に引っ越してきた時から同い年ということもあり仲良く暮らしてきた。お互いの部屋なんてとうに見飽きているし、家族ぐるみの付き合いだから河原でバーベキューとかいろいろしたものさ。そういえば昔から妹は臨也のこと好きとか言ってたけど、臨也からはそんな浮ついた話聞かないなぁ。高校は離れたから知らないけど、あいつまさか今も人ラブとか言ってんのかな…。


「あらつばきちゃん、臨也まだ帰ってきてないの。部屋にあがって待ってたら?」

『あ、そうするー。ありがとう』


臨也の部屋に入るとおばちゃんの言ってたとおりだれもいない。わたしは適当にベッドにばふんと飛び乗り、ほんの少し散らかった部屋を見渡した。臨也どこ行ったのかなぁ。さっさと帰ってこいよあのバカ。せっかくつばきちゃんが遊びに来てやったっていうのにさ!


『…ん?なにコレ』


ベッドからちょっと離れたところにあるテーブルに一枚の紙?みたいなものがある。ぐっと手を伸ばして見てみると写真だった。映ってるのは新羅とオールバックにした男の子、臨也、それから臨也と喧嘩してる金髪の男の子。写真の撮り方てきに新羅が自分で撮ったんだろう。(てゆーか新羅懐かしい)…ふーん。臨也、楽しそうにやってんじゃん。ナイフでる喧嘩ってやばい気がするけど、わたしの知らないところで知らないみんなと仲良く───


『………』

「あ、つばき。来てたの」

『臨也…』


臨也のすべてがわたしであればいい、なんてそんな考え臨也に理解できるはずがない。臨也がわたしの知らないだれかと仲良くするなんて、イヤだ。でもこんなのなんだかキタナイ。うそ、どうしよう。こんな気持ちになったの初めて…。


「どうかした?」

『…あのさあ』

「うん」


中学の頃臨也の私服を見たいと騒いでいた女友達をどうしてか今突然思い出した。ああ、今日の服よりわたしは昨日着てたやつのほうが好きだな。やっぱり臨也には黒が似合うけど、グレーも似合うんだよ。


『わたし臨也のこと』


そうそう。わたし、臨也のことがね。好きなんだよ。妹が臨也を好きっていうその何百倍も。臨也が好きで、臨也のすべてをわたしにしてほしくて、高校だって離れたくなんかなかった。だけどわたしは臨也よりバカで、さ。離れてから気づくなんて遅すぎますか。だってもう高3じゃん。だけどわたしたちの距離は歩いて5秒、走れば3秒でしょ?だからお願い臨也、手遅れなんて言わないで。臨也、臨也もわたしのことを


「好きだよ」

『……わたしの、言葉』

「ごちゃごちゃ考えてるみたいだったからさぁ」

『臨也、わたしのこと好きなの?』

「もちろん」

『ほんとにほんと?人ラブじゃなくて?』

「俺がいつからつばきのこと好きだったか知ってる?」

『し、知らない…』

「君の妹に告白されるよりもずっと前から」

『え、あいつ告白してたの!?くっそー』


……でも、ま、いっか。臨也がわたしを好きで、わたしも臨也が好きで。それですべてはオールオッケーってこと。


「本当は明日言うつもりだったんだけどな」

『なんで?明日は臨也の誕生日でしょ?』

「覚えてたんだ」

『12時になった瞬間おめでとうって言うためにここに来た』

「ふーん」

『ねえ、なんで明日にしようと思ったの?』

「別に?」

『えー気になるー』

「内緒ってことで」

『ふーん』


あ、臨也、12時になったよ。18歳だね、お誕生日おめでとう。わたしからのプレゼント、ほんとは泥団子にしようと思ってたけど仕方ない、セカンドキスをプレゼントしよう。え?ファーストキスがいいって?ごめんごめん、それはもうあげちゃったよ。出会った頃のあんたにね。


(君と年を取るのも何回目になるのかな)(これからもたくさんあるんだから、数え切れなくなるよ)


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120504//夜に溶けるキス
臨也happy birthday!


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