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カーディガンから誘う小指

ほんの些細なことで喧嘩した。理由もとうに忘れてしまったほど、本当にくだらないことだった。別にこれが初めてだったわけじゃないし、時間がたてばオレも向こうもまるで何もなかったみたいにもとに戻るに違いない。そう思ってオレは、時の経過に身を委ねることにした。







ところがどっこい、いつまでたっても仲直りできねーじゃねーか。喧嘩してもう2週間、まったく話していない。いつもならだいたい3日程度、遅くても1週間以内には普段通りに戻っていたというのにもう2週間だ。てっきりいつもみたいに仲直りしたと思って話しかけたら思い切りシカトされたので、まあつまりそういうことなんだろう。


「(つーかマジで長くね?)」


あれ、今回の喧嘩ってそんな後引くようなやつだっけ?確か…んー、あんま覚えてねえけど、ドタキャンが原因だった気が。久々のデートでそりゃあ申し訳なかったけど、突然入った練習試合なんだから仕方ねえんじゃねーの?それに、残念なのはオレだって同じだ。バスケは楽しいけどもちろん彼女との時間だって楽しみにしてた。そこらへん、理解あるやつなのになんで今さらそんなに怒るのかねー。


「やっぱ女ってわかんねーな、真ちゃん」

「知るか」

「いつもなら笑って許してくれてたのに、なーんで今回に限って」

「…いつも笑って許してたからじゃないのか」

「え?」

「いつも許してくれてた彼女が許せなくなるくらいだったんじゃないのか」

「…………真ちゃんマジ天才!」


オレのバカ。そうだ、そうだったんだ。いつも笑って許してくれてたあいつが、笑えなくなるくらい、泣いてしまうくらいにあいつの心は悲しみが蓄積していたんだ。


▽▽▽


「やっほー」

『高尾くん…』


どうすればいいのか迷った末、オレは部活が終わってから彼女の家に行った。インターホンを鳴らして、出てきた桃花ちゃんはすっかり見慣れた普段着だ。


「今からちょっと話せる?」

『…うん』


さすがに家まできたらシカトもできねーだろっつーオレの考えは正解だったらしい。オレたちは近くの公園まで歩き、なんとなくブランコに座った。ベンチに座るよりは少し距離を取ったほうがいい気がした。


「…あのさー、なんつーか…」


しかしいざ話し始めるとなったら マジオレへたれ。微妙に緊張してるし。


「…喧嘩のことなら謝るから…だからもうやめね?」

『……』

「桃花ちゃんって優しいじゃん?だからオレお前の優しさに甘えてたんだよな、多分」

『……』

「でもやっぱ、もう2週間たつし、オレは…その、限界。お前と喋りてーよ。抱きしめたいしキスもしてえ」

『…高尾くん、なんでわたしがずっと口聞かないかわかってる?』

「ドタキャンのことっしょ?」


当然だ、と言うようにオレは言い切る。けれど返事がないので首を傾げて隣の桃花ちゃんを見ると『やっぱり』とでも言いたげな顔してため息をつくもんだから意味が分からない。ちょっと待て、桃花ちゃんはオレがドタキャンしたから怒ってるんじゃない?


『…そりゃ、ドタキャンも悲しかったよ、久しぶりに2人でずっといれるの楽しみにしてたから』

「じゃあ何に怒ってんの」

『……。…高尾くんが、…』

「ん?」

『ドタキャンの日練習試合で女の子から差し入れされててそれをニヤニヤしながら受け取ってた』

「え?」

『…………』


早口で吐き出された桃花ちゃんの言葉を聞き取れなかったわけじゃない。ただ理解するのに少し時間を要してしまった。桃花ちゃんはオレが、同学年の女の子から差し入れもらったとこを見て、そんで文句言ってる。あの日練習試合を見に来てたことにも驚いたが今はそんなことおいといて、つまり、アレか。


「なんだよ、嫉妬かよ!」

『な、なんだとは何よ!わたしすっごくモヤモヤしてたのに…』

「つーか何、見てたの、あれ」

『…高尾くん、人気あるから。ああいうの見たらダメだってわかってても嫌な気持ちになっちゃうの、ごめんね、わたし嫌な彼女だね』


そんなことないよという言葉を貰うためなどではなく、本気でこいつがそう思ってることが伺えた。きっと桃花ちゃんは、悩んで悩んで、オレに打ち明けることもできず考え込んだんだろう。

…ああ、ほんと。


「桃花ちゃんバカだなー」

『ば、バカだもん、どうせ』

「オレが好きなのはお前だけだぜ?」

『そんな恥ずかしいセリフよく言えるねっ』

「オレも恥ずかしいっつーの」


ブランコから立ち上がり、桃花ちゃんの前にしゃがみ込む。そして彼女の小さな手をとり、その小指に自分の小指を絡ませた。


「オレ人の気持ち考えたりすんのは好きだし得意だけど、お前のことになるとかっこつかねえんだよな」

『…かっこいいよじゅーぶん』

「だから約束。これからもドタキャンするかもしれない。差し入れはやっぱ嬉しいしニヤニヤしちゃうかも。」

『そ、そんな約束いらな…』

「でもお前のことしか見ないからさ」

『………んー、』

「こんなに惚れてんのに、お前以外の女なんて眼中にねえよ」


桃花ちゃんの耳元で囁くと、顔を真っ赤にさせて何度も頷かれた。オレはそんな彼女を可愛く思い、約2週間ぶりに抱きしめたのだった。


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121112//カーディガンから誘う小指

◎マサミちゃん
40万打記念企画に参加しくださりありがとうございますー!
急きょリクエスト内容を変更したマサミちゃんですが、どうやらその内容がものすごく書きやすく、ってかちょーど思い浮かんだからもう先に書いちゃいました…!
いつもいつも、ロンリーとわたしを支えてくれてありがとう(^ω^*)
サイトやってたら来てくれる人が移り変わって、前は見たのに今はすっかり…みたいな人だってやっぱりたくさんいるし、しょーがないことだってわかってるけどそれでもマサミちゃんにはずっとずっといてほしいです。
頻繁に声かけてたら疲れるだろうから、本当に時々でもいいんで、今みたいにラビラビ好きとか黒子にハマったとか、報告してくださいな(´ー`)♪
まあそんなかんじです。照れてないよ、べつに。
んじゃ、この度は本当にありがとうございましたー!


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