嘲笑リズム | ナノ


やってきました、マカロンの日。

黄瀬くんに受け取ってもらえない…いや、受け取ってもらってそのあとで捨てられるという苦行を味わってさらに今回も押しつけようとしてるのだから、私ってそろそろ何かの容疑で警察に通報されても仕方ないんじゃ…?す、ストーカー?いやいやあとつけたりはしてないし!大丈夫だよね?ね?そう美里ちゃんに聞いたら「大丈夫に決まってんじゃーん、さやかちゃんきもーい」って笑いながら言われた。可愛い笑顔できもいとか言っちゃうあなたが怖い。


「それより、ちゃんと可愛く作らないとだめだよー」

『え?何、いきなり』

「ちょっとちょっと、ほら聞こえないのぉ?この声が!」


言葉の意味が理解できずはてなマークを浮かべる私に、美里ちゃんは耳をすませるように促す。耳に広げた手を当て、周囲の声を受け取った。


「黄瀬くん受け取ってくれるかなぁ」

「カップケーキの時も黄瀬くんにあげたしあんたもう好きなんでしょー!?」

「黄瀬くんってどれくらいもらってるのかなぁ」

「黄瀬くん優しいし受け取ってくれるよ!」

「私も黄瀬くんに…」

「黄瀬くん…」

「黄瀬くんが…」


き…、


『黄瀬くんしか聞こえない…!』

「そうなのでーす」

『このクラスの何人…え、ほんと何人が渡すの!?』


多いとは思ってたけどまさかここまで多いなんて!このクラスだけで半分は確実にあげてる。今言わないだけで私みたいにあげる子だって、中にはいるかもしれない。


「そんなに驚くことじゃないじゃん。現役モデル、容姿にじゅうまるのイケメンで、始めてちょっとで100人超える部活のレギュラーまでとっちゃって、これってもうモテる要素しかないよねぇ」

『うっ…』

「彼氏にしたらそれだけでステータスだよぉ」

『す、ステータス?』

「さやかちゃんはそんなこと考えなくていいけどね。ただ、そういうの狙って黄瀬くんゲットしたいって思う子が少なくないもないってこと」

『…私は違うもん』

「そうだね。さやかちゃんは違うね」

『……』


何かを確信して言ってるわけでもないし、だから「なんでそんなこと言えるの」って聞かれたらそりゃ困るしだけどそれでも私は、


「ほらほら、作りますよー。あ、さやかちゃん余ったらわたしにくれない?青峰くんにあげたいんだぁ」

『自分で作らなくていいの?』

「いいのいいの、プレゼントするだけだし」


にっこり笑う美里ちゃん。ま、本人がいいならいいんだけど。この前のカップケーキもあげちゃったし。


「ラッピングも可愛くしようねぇ」

『うんっ!』


♂♀


出来上がったマカロンは、本当にとても可愛くできたわけだ。美里ちゃんも隣で「可愛い!」と騒いでいる。いやしかし我ながらうまい、ってか非常にかわいい!このマカロンも捨てられるという悲惨な末路を辿るのかと思うとちょっと泣きそうになった。


「さやかちゃん」

『…え?』

「がんばろ!」


美里ちゃんの笑顔って、なんだかこっちまで元気になっちゃうような不思議な力がある。

私は頷いて、確かに渡す決意を固めたのだった。

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