lovin' rabbit | ナノ
 


 29



「暑い…暑い……あーつーいー!」
「うるさい」
「いだっ!な…殴ることないのに…!」
「うるさいから」
「誰のせいでこんなことになったと思ってるんですか!?」


なぜわたしが今こんなにも暑がっているかというと、わたしの部屋にいるからである。どうやら現在春雨の船は灼熱の星に滞在しているようで、船内はどこも30度を上回る暑さだ。ちなみに今のわたしの部屋は35度ある。地球では猛暑だ。…エアコン?当然、第七師団の待遇はわりといいですからね(命かかってるから)、わたしの部屋にもありますよ。


見るも無惨になってしまったエアコンという物だった代物が。


それは15分前のこと──…


「やっぱりエアコンがないとこの暑さは死んじゃうなー」


ソファーに寝転びながら雑誌を見ていたら、虫みたいなエイリアンが飛んでるのを偶然発見した。決して虫ではない!だってなんか…体は蜂みたいだけど、顔はちょっと人面っぽい…
その気持ち悪さ故にわたしは悲鳴をあげた。それはもうぐわっと。


「ぎゃあああああ!!!」


その悲鳴を、たまたまわたしの部屋の外を通りかかったらしい神威さんは聞きドアを開ける。


「どしたの?」


なぜか顔半分くらいしか見えないぐらいの幅しか開けない神威さん。ちゃんと開けてくれませんか!


「え、エイリアンっ…!人面虫エイリアン…!」
「?」


ようやく中に入ってきた神威さんの腕にしがみつき人面虫エイリアンを指差す。ちょうど今、エアコンにとまってて…うわあっやっぱりきもい。


「なんだ、くだらない」
「ちょっ、退治してくださいよ!」
「え。めんどくさ」
「こないだ書類整理手伝ったでしょー!むしろほとんどわたしがやったじゃないですか!」


うーんと言いながら頭をポリポリかく神威さん。借りは返してなんぼでしょう!


「しょーがないなぁ」


神威さんは笑顔のままわたしの手を離させ、ぴょんとジャンプしてエアコンにとまった人面虫エイリアンに拳を振りかざした。……ん?


この時、わたしの頭の中ではものすごい速さで考えが交差する。


「(神威さん虫殺すごときでそんな拳振りかざすの!?大丈夫なの!?よく見てください虫の下はエアコンですからね!ってゆーかこれはやばいんじゃないのか、このまま言ったらエアコンもろとも!そんなことになったらわたし干からびる!そもそもこの人手加減とかできるのか!?)」


ドガァァアアン!


わたしの考えは的中だ。…嫌な考えばかり当たるな。


「はい、終わったよ」
「エアコンもなァァァ!」
「え?どしたのさくら、般若みたいな顔して」
「しますよ!般若みたいな顔にもなりますよ!なんでエアコンもろとも殺すんですか!?自分の力の強さぐらいわかりますよね!?」
「うん」
「なんでそんなに冷静!?エアコンがブッ壊れちゃったんですよ!!わたしのエアコン!!」


…ということで、15分後。冒頭に戻る。わたしの部屋はただひたすら暑い。


「どうするんですかほんと…わたしこのままじゃ熱中症で死んじゃいます」
「よわっ」
「夜とか寝れません。今もすでにキツいです」
「なら俺の部屋に来れば?」
「神威さんの部屋?」
「涼しいし。エアコンなおるまでこっちに来なよ」
「い…いいんですかぁ!?」
「あれだけ文句言われたらねー」
「やったーありがとうございます!」


ということで、プチ!お泊まり期間の始まりです。


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