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「うーん、取扱説明書とかついてないといまいち使いにくい…」
現在相川さくら、自室にてニュー武器と苦戦中。
わたしが昨日買ったこの鎌はなかなかの強者で、いまだに心を開いてはくれない。あの時神威さんは「このボタンを押せば小さくなるよ」と言ったけど、小さくなるどころかこの鎌はずっと小さいままだ。大きくなる気配をまったく見せない。
「まさかこんな小さなサイズで戦うわけじゃあるまいし…」
うーん、なんで大きくならないんだろ?
店に飾ってあった時や神威さんが持ってた時は大きかったのに…。
「(聞きにいこーっと)」
もちろん神威さんに!
♂♀
「──と、いうことでですね。鎌がまったく大きくならないんですよ」
そう言ってベッドに座る神威さんの前に鎌を置く。
笑顔のままそれを手にとった神威さん。
すると、見事その鎌はあの時見たように大きくなったのです。
神威さんもわたしも目を丸くさせた。
「え……えええええ!?」
「ダメだよさくら、嘘ついちゃ」
「嘘じゃないですよ!ほんとにおっきくならなかったんですから…っ」
神威さんから鎌を奪い取り、小さくするためにボタンを押す。
「……」
「……」
「……ほ、ほら、今度は小さくなりません!」
「えー」
「神威さんやってみてくださいよっ」
「ん」
「……えええええ!」
「やっぱりさくらは嘘つきってわけか」
「違いますってェ!」
なんでわたしだと何にも変わらないの?ってゆーか神威さんボタン押さなくてもおっきくなったり小さくなったりしたよね?なに、このボタンは関係ないわけ?
ああもうっ、わかんない!
「……で、なんで俺?」
「阿伏兎さんなら知ってると思って」
「…わかんねーもんなんか買うなよ、このすっとこどっこい」
「だって…」
「あのなぁ、コレはボタンでサイズ変えるんじゃねーよ」
「えっ!」
「いいか、こいつはな。気持ちで変わるもんなんだよ」
「き…気持ち?」
「戦闘心のある奴の心に反応するってこった」
「どーゆー意味ですか?」
そうやって聞き返すと阿伏兎さんは心底めんどくさそうな顔をした。(バカでごめんなさい…)
「団長みたいに常に強敵を求めてる化け物にこの鎌は反応するんだよ」
「…つまり、わたしに戦う気持ちがないから鎌の形は変わらないんですか?」
「ああ」
「……」
確かに、納得だ。
今のわたしには別にそんな物騒な気持ちはないし、反対に神威さんはいつだって好戦的だった気がする。
要は戦いたいって気持ちがないとダメなわけね。
…アレ?でも、それって。
「もしわたしが戦わなきゃいけないところで戦いたいって気持ちがなかったら、どうなるんですか?」
「普段は小さくしてるんだよな、それ」
「はい」
「そりゃあもちろ、」
「そんなの簡単だよ」
「敵にやられておしまい、ただそれだけさ」
神威さんの言い方に、ゾワってなった。だって怖いんだもん…!なんかこんなこと言われたらその時にめちゃめちゃパニックになりそうな気がするんですけど!
「…ま、さくらならできるって信じてるよ」
さっきの冷たい声からは想像できないほどの優しい声でそう言って、ポンと頭を撫でる彼に胸がキュンキュンしたのは言うまでもない。
(鎌の使い方で学んだこと)
(戦いたいって気持ちがあれば、自分の思うサイズに変換できるってこと)
(本当にわたしに使いこなせるのか…不安だ)
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