21
わたしと神威さんが春雨の船からおりたこの星は、今にも泣き出しそうな空を持つ星だった。
「なんかずいぶん…どんよりした空ですね」
「さくらは嫌い?俺は好きなんだけど」
「そうですね、どちらかと言えば嫌いです」
「へえ」
自分から聞いといたくせにずいぶん興味のない声音で神威さんは軽く返事をした。あ、コイツ興味ないなって思ったからもうわたしも何も言わないことにしました。
でもやっぱり、言いたいことがあって口を開いた。
「わあ……なんか、暗いとこ、ですね…」
「うん」
「…しかも怖そうな人がたくさん……」
「さくら、さっさと歩きな。買いに行くんだろ」
「は、はい」
神威さんの後ろを歩く。慣れた足取りで進んでいく彼の速い歩調に合わせつつ、周りを見るとたくさんの店が並んでいた。数々の武器があって、小さなものから大きなものまで。武器には到底見えない可愛らしいものや、物騒すぎるものもたくさん。
「さくらはどんなのがいいの?」
「…んー、なんでしょ。わたし今まで武器とか使ったことないんでわかりません」
「なら一通り見ていこうか」
「はい」
自分に合うとかよくわからないから、なかなか選ぶのに苦労しそうだ。夜兎の傘は、なれてしまえばマシだけど使いにくさがあった。ということは、わたしにはああいった類いのものと相性が悪いのだろうか。(こう、長い感じのやつね、)
「(だからって………拳銃の腕とかはないしなぁ)」
拳銃使いこなすとかちょっとかっこいいけど。かっこよさを求めて実際使えなかったらシャレになんない。一瞬でお陀仏だ。
「あ、ねえ、こんなのは?」
「?なんですかコレ。刀の…柄?」
「ここのボタンを押すと、あら不思議」
神威さんがぽちとボタンを押せば、何もなかった柄から光のようなものが出てきて刀身になった。(あら不思議って…)
ってゆーかこれ、
「なんかどっかで見たことあるんですけど…!?」
「気のせい気のせい」
「いや、つーか気のせいだとしてもこんなの使えませんよ!」
わたしは剣術は心得ていません!
「ふーん。じゃあこっちとかどう?」
「…なっ……でか……!」
神威さんが親指を立て差したのは、わたしの身長よりも大きな鎌。鎌って……!
「ちょっと持ってみな」
「え、ちょ、」
「うん。よく似合うね」
「えっ、ほんとですか!似合いますか!」
「似合う似合う」
そうか…似合うのか!わたし大鎌似合うのか!それじゃあコレにしちゃおっかなァー!(単純)
「このボタン押せば小さくなるらしいよ」
「なんか最近の武器はボタンがついてるんですね。すごすぎてちょっと引いてます」
「小さくなったら肌身離さず持っておけるらしいし、さくらにちょうどいいんじゃない?」
「神威さんが似合うって言ってくれたからコレにします」
そう言ってから阿伏兎さんにもらったお金で鎌を買った。店員の天人さんがサービスで小さくした鎌をいつでも持っておけるようにと、ブレス用のチェーンをくれた。(ありがたい!)
そうして店から出てピンクの頭を探しだし、急いで駆けつける。
「いいね、さくら」
「え?」
「犬みたいな子は好きだよ」
「い、いぬあつかい…?」
(そういえば神威さんと並んでると、神威さんへの視線のすごさがわかった)(だって女の人みんな見てる…!やっぱモテるんだ!)
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