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「愛しあう〜ふうたーりい〜しーあわせのぉーそらぁ」
隣どーしあーなーたーと、
「あたしさくらんぼ♪」
「?お前はさくらだろ?」
「もうっわかってませんね〜ピッピくんは!」
「いやわかんねーし。つーかそのピッピくんやめろ!」
「だってピッピくんはピッピくんじゃないですか」
わたしが今話してるのはピッピくんもとい朱雀(すざく)くん。
同じ第七師団の仲間です。まあ立場は全然ピッピくんの方が上だけどね!(実は春雨に来て神威さんや阿伏兎さん以外で初めて仲良くなった人なんです)
確かピッピくんも夜兎族って聞いたような。
「見て、食堂のコックさんにさくらんぼもらったの!」
「さくらんぼ?ふーん」
「ピッピくんにもわけてあげようか?」
「1こだけもらう」
「どうぞ」
「サンキュ。…そーいや、さくらんぼのへたを口の中で結べる奴はディープキスがうまいって聞いたことあるな」
「でぃ、ディープキス!?」
「…ハッ。さくらはヘタそ」
ごちそーさん、そう言ってピッピくんは去っていった。なんつーこと言うんだ彼は…!ってゆーか最後のひどくない!?
わたしだって……!
「(じー)」
………。
「(神威さんとこ持ってってたーべよ)」
わたしにはできそうもありません。
♂♀
「かーむいさーん。さくらでーす」
「どーぞー」
「神威さん!さくらんぼ持ってきました!」
「さくらんぼ?」
開けなれた扉の向こうに入り、神威さんの座るソファーにわたしも腰かけさせてもらった。
そしてたくさんのさくらんぼをのせた大きなお皿を彼へと差し出す。
「一緒に食べましょ!」
「俺さくらんぼ嫌い」
「な、なんで!?」
「種めんどくさいから」
「びっくりした…だいじょぶです、これ種ありませんから!なんかコックさんがなんたら星からとってきたって言ってました」
「へえ。なら食べようかな」
いただきます、と丁寧に言い、ひとつ、またひとつと口へ運んでいく神威さん。
わたしも同じように食べてたら、さっきのピッピくんの言葉を思い出した。
「そーいえば、(むぐむぐ)」
「ん?(むぐむぐ)」
「さくらんぼのこの長いのあるじゃないですか、へた?(ゴクッ)」
「うん(むぐむぐ)」
「コレを口の中で結べる人は(パクっ)」
「うん(むぐむぐ)」
「ディープキスがうまいらしいですよ(むぐむぐ)」
「ディープキス?(むぐむぐ)」
「はい(むぐむぐ)」
「やってみようか、さくら(ゴクッ)」
「(ゴクッ)、え?」
はいという言葉と共に神威さんはさくらんぼのへたをわたしに差し出す。
早いことに、もうひとつは左手で持っていた。
「勝負ネ。よーいどん」
あまりに気合いの入らない開始の合図だが、なんにせよ勝負は始まったのだ。
……ん?なんかこれ…意外と……
「難しいれすね、神威さん」
「んー。……あ、できた」
「えっ!」
べ、と出された舌の上にいたのはきれいに結ばれたさっきまでのへた。
「神威さんはや!ほんとにやりましたか!?」
「やったよ。簡単じゃないか」
「どーやってやったんですか?わたし全然できないんですけど」
「こう、舌と歯を使って」
「舌と歯…?」
んー、できない。
「神威さん早かったからディープキスうまいんですね」
「試してみる?」
「(ぼふん!)」
「あはは、ほっぺがさくらんぼみたいにピンク色だ」
そ、そりゃあ神威さんみたいに整ったお顔の人にそんなの言われたら照れますよ!
(神威さーん…口んなかが変な味しますー…)(できるまで出しちゃダメだから)(むり…!)
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