lovin' rabbit | ナノ
 


 14



今までピンチならたくさんあった。かくれんぼで鬼に見つかりそうになったり、突然へびが現れたり。当然、どれも今のこの状況には到底及ばないものだ。


「っ、え、と……わたしは、」


今にも向かってきそうな長刀の先端は見ないように目を泳がせる。変わらず上でにこにこしながら見ている神威さんが憎い。


「や──やだなぁ、仲間の顔忘れちゃったの?」
「はぁ?」
「わたしも仲間じゃん!ひどいひどいっ、せっかく外を見張ってたのに!」


く…苦しいだろうか。だけどこうするしかなかった。あわよくばボスのとこまで外の報告とか適当に行けたらいいなんて考えて。いや、さすがに仲間の顔覚えてないわけないっつーか、こんなやついないくらいわかるっつーか。一か八かの賭けだったのだ。


「あぁ、お前ローザンヌか!」
「!そ、そうそうローザンヌ!思い出してくれた?」
「ああ。悪かったな。ボスのとこまで外の報告か?それならあっちのエレベーターを使うといい。ボスは12階だ」


こいつクビだろ。仲間の顔覚えてねーよ。しかもボスのとこまで案内してくれたよ。超バカなんですけど。
とりあえず適当にお辞儀してから(バカな)天人の横を通りすぎて言われたエレベーターまで足を進めた。
いつのまにか隣を歩いていた神威さんにはあえてツッコまない。ツッコんでたらキリがないと気付いたからだ!


「なかなかやるね」
「わたしの演技力、どうでしたか?」
「普通。それより相手の頭が悪すぎた」
「さっきやるねって褒めてくれましたよね!?」


神威さん言ってること変わってるよ!


「何階だっけ」
「…12階です」
「押してよ」


自分で押せよ!


「今自分で押せよって思った?」
「!いーえ?」
「俺は思った」
「……」


神威さんはなにが言いたいんだ。そんなこと考えてるうちにチーンとどこか間抜けな音が鳴った。
12階についたようで、エレベーターの扉が開いていきわたしたちはこの小さな箱から出た。


のだが。


「さくら」
「……はい」
「どうやら頭が悪いのは俺たちの方だったようだ」
「そのようですね」


わたしたちの周りには囲むようにたくさんの天人(物騒な武器所持)がいた。当然、「ようローザンヌ!待ってたぜ!外どうだった?」な雰囲気ではない。「ローザンヌ死ね」な勢いである。だって彼ら目がギラついてるもの。


「やぁ、いらっしゃいおバカな旅人さんたち」
「どーも。あんたが一番えらい奴?」
「そういうことになるのかな?」
「さくら、俺はアイツ倒すからあんたはこいつらよろしく」
「待て待て待てェェエ!」
「……」
「なんですかそのめんどくさそうな目!おかしいでしょ!わたし1人でこの大人数相手するんですか!?」
「うん」
「冗談ですよね?神威さん冗談ですよね?」
「俺はあの辰羅の奴と戦いたくてウズウズしてるんだ。アイツが終わったらこっちに来てあげるから、それまで頑張れ」


そう言った神威さんは見事な大ジャンプで群衆を飛び越え、向こう側にいるボスのもとへ行ってしまった。
残されたのは、怖い怖い天人に囲まれたわたし。


「……えへっ」


死ぬかも。


(一難去ってまた一難)


(なんかわたし今日人生最大のピンチの更新ばっかしてる)


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