理論派と感覚派



「あ゛ぁーッ!やっぱできねぇぇ!」
「うーん私もちょっと無理かな」

 青筋を立てながら騒ぎ立てる悟の隣で傑は半ば諦めたように苦笑していた。

「もっと分かりやすく教えろよ硝子!」
「だから“ひゅーっとやってひょいっ”だってば。何で分かんないかなー」
「その説明で分かる訳ねーだろ」
「まぁ反転術式は向き不向きがあるから仕方ないさ」
「お前らがセンスねぇだけだよ」

 硝子は煽るようにそう言ってからわたしに視線を寄越した。

「名前は出来るようになったよ。ね?」
「まぁ一応はね。でもまだ精度微妙じゃない?」
「あれだけ出来たら十分」

 うーんそうかなぁ、なんて腑に落ちないでいるとふたりが勢いよくこちらに向き直った。え、何その顔。どういう感情?初めて見たんだけど。

「ハァ!?まじか!!」
「名前、やり方教えてくれないかい!?」
「え、わたしが?」

 人に教えれる程ちゃんと理解できてないのに。ふたりから期待の圧が凄い目で詰め寄られたわたしはしぶしぶ説明することにした。

「えっと、“シャーッてやってピッ”みたいな感じだよ。多分硝子の方が分かりやすいと思うけど……」

 やっぱり出来るようになったばかりの拙い説明では伝わらなかったようで、さっきの勢いはどこへやら、ふたりはもの言いたげな目を向けるだけでそれきり黙りこくってしまった。横からぽんっと硝子の手が優しく頭に置かれる。

「さすが名前はセンスあんね」
「硝子の教え方が上手だからだよぉ」

 硝子に褒められたし、まぁいっか。きっとふたりともそのうち出来るようになるだろうし。少ししょんぼりとしていた気持ちは硝子と話をしている内にどこかへ消えていった。


「あの説明で出来るようになるのか……」
「アイツらの頭どうなってんの?これ俺らが可笑しいの?」