自滅する五条



「あー暇過ぎ。傑、何か面白いことしよーぜ」
「面白いことって、例えば?」
「山手線ゲーム」
「却下」
「は?何でだよ」
「悟とそのゲームをして面白かった試しがないから」

 何だよノリ悪ぃな、と不貞腐れていると名前と硝子が教室に入ってきた。

「ふたりともおはよう」
「おはよ」
「傑も悟もおはよー」
「はよ。なぁ三人で山手線ゲームしよーぜ」
「やだよ、つまんねぇじゃん」
「何だよ硝子もノリ悪ぃな」

 じゃあ何ならいいんだよ、と口を尖らせていると不思議そうな顔をした名前と目が合う。

「ねぇ悟、それってどんなゲームなの?」
「え、山手線ゲーム知らねーの?」
「名前が知ってる訳ないでしょ。ずっと海外にいたんだから」

 あーそういやそうか。硝子が相手にしなくていいよこんなん、なんて言っても名前は興味津々なようで、気を良くした俺は山手線ゲームのルールを説明してやった。へぇそんなゲームがあるんだね、と笑った名前は大きく頷いた。

「いいね面白そう!やろやろ」
「だろー?じゃ、お題は“俺の好きなところ”な!」
「いいけど、それすぐ終わっちゃわない?」
「はー?」

 俺には大して良いとこないって言いて―のかよ。じろり、と睨む俺に横から傑がおい、と声を掛ける。

「悟、辞めといた方がいいと思うよ」
「あ?何でだよ。やらねー奴は引っ込んでろよ」
「……はぁ、私は止めたからね」
「んじゃ、名前先行な」
「はぁい」
「「せーのっ」」

 ぱんぱん、手を二回叩いてから名前が口を開く。

「全部」
「……」
「ほらぁ、やっぱりすぐ終わっちゃったじゃん」

 は?こいつ今何て言った?
 言葉の意味が理解できなかった俺は口を半開きにしながら固まった。

「ほら、言わんこっちゃない」
「馬鹿だな自滅してやんの」

 ふたりの声に一気に顔に熱が集まっていくのが分かった。そんなさも当たり前みたいに恥ずかしいこと言ってんじゃねーよ。

「おまっ、ば、馬っ鹿じゃねーの!?」
「ええ、何で怒ってるの?そういうゲームじゃないの?」
「名前は何も悪くないから気にしなくていいよ」
「そうそう、馬鹿はほっときな」