short | ナノ


七夕の夜に

7月7日、俗に言う七夕。
織姫様と彦星様が1年に1度だけ、
天の川を渡って会う悲しいけれどロマンティックな日…
どんな事するのかなぁ、ちゅーとかぎゅー!?きゃっ!

なんて思いながら通学路を歩いていると、聞きなれた金属の擦れる音と共に聞きなれた声。

「はよー!名前ちゃん!」
「おはよう高尾くんに真太郎」
「あぁ」
「うっわ相変わらずそっけねー」
「…名前、乗っていいぞ」
「え、ちょっま」
「じゃあお言葉に甘えてー!あ、高尾くん。私今日先生に頼まれごとされてるから急いでね?」
「2人とも勘弁してくれよー!!」

高尾くんの悲痛の叫びも虚しく、私と真太郎は今日のおは朝の占いの話をしだす。

「蟹座1位だったね」
「それでも気は抜けん。ラッキーアイテムは変わらず持っているのだよ」

そうして見せてきたのは、最近地味に流行り出した人形のレアものだった。よくゲットしたな…相変わらずこの人凄いわ…私の星座の話もして、会話に一区切りついたとき、本題!とばかりに話題を持ち出す。

「ねえねえ!今日って七夕だよね!」
「…それがどうした」
「真太郎はどう思う?私はロマン溢れて素敵だと思うけど364日の間は辛いだろうなぁって思うの」
「はぁ…くだらん。知っているか?天の川はよくその話から1日、また7月のみ見れると思われることが多いが実際は1年中見れるのだよ。そう考えたらロマンの欠片もない」
「ちょっと聞いた?高尾くん。真太郎ったらひどいよね」
「ねぇよなぁ。ちなみに俺はまじロマンティックだと思うぜ!」
「だよねだよね!高尾くんはその1日
2人は何をすると思う!?」
「1つになって愛を囁き合いそして…」
「そそそういう解答は、なし!もう!私女子なんですけど」
「めんごー。じゃあさ…」

そして私と高尾くんは学校に着くまでずっと七夕話に花を咲かせる。
真太郎の不機嫌な視線には目もくれず…

*********

授業も終わって部活の時間。
バスケ組と別れ自分も活動場所へ向かう。家庭科室と書かれたプレートがぶら下がる我らが料理研究部の教室へと入れば先輩たちへ挨拶し、すぐエプロンと三角巾を頭に巻いた。
毎日毎日料理を作ることはないけど
今日はもう何週間も、2か月も前から予定が話し合われていたため、全員が材料の出し運びをしている。

「じゃ、一通り準備できたし、始めよっか!」

部長の一言で全員…特に2、3年生の先輩たちがいつもより気合いの入った返事をした。
あぁ、この部の伝統行事が始まるのか…そんな気分で私も確実に時間のかかることが予想される手元のレシピに目を通した。

2個、作んなきゃなぁ。時間間に合うかな…



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