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アナログが届けたラブロマンス

真琴くんが東京の大学に進学して暫く経った頃、私宛に手紙が届いた。
今じゃデジタルの時代なのに、久しく見ることのなかった封筒がポストにあって吃驚した。

お洒落な茶封筒に私が好きと口にしたことがあるアリスモチーフがデザインされた便箋。
こんな洒落た物を真琴くんが買ったと思うとくすりと笑みが溢れる。
きっと、恥ずかしかっただろうに。

愛しい気持ちに包まれながら、真琴くんの整った綺麗な字を読んでいく。

読み終えてから、私は慌てて携帯を開き連絡帳からお気に入りに登録してある真琴くんに電話をかける。

コール音が暫くした後、もしもし?と聴きたかった声が聞こえた。
「真琴くん、お手紙ありがとう。今読んだんだけど、これ…」
「うん、名前ちゃんの空いてる日があれば是非こっちに招待したいんだけど、どうかな」
「そんなの喜んで行くよ。というか、いつでも駆けつけるよ。会いたいもの」
「うん、俺も会いたい。泊まりでって思うんだけど…大丈夫?」
泊まり、と聞いて2日間も真琴くんに会えるんだ!と気分が高まる、と同時にどこに私は泊まるんだろうと疑問に思った。
「泊まり…?どこに?」
「俺の部屋」
「本当?!全然大丈夫!早く行きたいよ真琴くん!」

大学生になったからといって中身がころりと変わったわけじゃない。
まだまだ中身はお泊まりという単語に喜ぶ子供だ。何しろ相手が真琴くんなんだもの。

「じゃあ明後日とか、どうかな」
「問題ないよ。ふふっ、楽しみ」
「俺も明日はいつもより大学に行くの頑張れそう。あ、ごめんね名前ちゃん、俺これから大学行かなきゃ。電話切るね」
「頑張ってね」

ツーツー、と声の代わりに聞こえ出した音に寂しさを覚える。けど明後日には会えるから。

そう思うと大学へ向かう足取りも軽くて。
ああ、早く帰って準備がしたいな。


アナログが届けたラブロマンス

(ラブストーリーは便箋に綴って!)



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