「名前ちゃん!?なんでそんなビショビショなの!?」
「えへへ、雨に打たれちゃった」
「あーもう!ハルちゃーん!タオルあるー?」

水泳部のミーティングをハルちゃん家で行う事になって、土曜日の10時にハルちゃん家で、と別れた昨日。

名前ちゃんが遅くなるって連絡してきた以外は、皆時間よりちょっと早めに集まってて、名前ちゃんが来るまでのんびりお喋りをする事になった。

ゴロゴロと音がした所でみんなのお喋りが止まる。
天気予報は快晴だって言ってたのに辺りは暗くなっていて、雷だけかと思ったけど、今にも降ってきそうな怪しい雲行きだった。
僕たちは家の中だし、傘を持ってない人がいたとしても、ハルちゃんが傘を貸してくれるだろうから帰りは問題ない。
そう思うけど皆やっぱり、名前ちゃんのことが気になった。

大丈夫、かなぁ…
傘、持ってるといいけど。

まだ降ってはいないし来るなら今だよ!って心でつぶやく。

でも思い届かず。

「天気予報嘘つきじゃーん。私よかれと思って折り畳み傘鞄から抜いちゃったんだよね」
「何のための折り畳み傘なの!名前ちゃんっ!」
「ごめんって渚。そんな怒らなくてもいいじゃん」

ぷくーっという効果音がつきそうな顔で名前ちゃんを見る。

「ほんと、ごめんってばー」

俯いた名前ちゃんの顔に影がさす。
言いすぎたかなと思って顔を覗き込むと一つ雫が顔を伝っていた。

「名前ちゃ、ん?」
「んー?なに?」
「えっ、泣いてるの?」
「はぁ?泣いてないけど、渚の方が泣きそうな顔してない?」
「してないよ?あ、何だ。雨の雫が流れただけみたい」
「何それ。ていうか私が泣いたら明日台風来るよ」
「そういえば学校に何の用事だったの?」
「突っ込みなしか。委員会の行事の打ち合わせだよ」
「へぇ!大変だね」
「これからもっと忙しいかな」
「頑張ってね!名前ちゃん!」
「ん、ありがと」

「それと、」
「な、なに?」
「名前ちゃんは笑顔が似合うから、笑っててね」

突然真顔になった上に、唐突に話の脈略を取れない事を言い出した僕に驚いて口を閉じた名前ちゃんに、念を押した。

泣いてるのかと思いました

( 笑顔が素敵な君だから、涙なんて似合わないよ )