「あの人綺麗じゃね?」
名前先輩が通ると誰かが振り向く。
「俺今日名字先輩に告るんだ!」
「頑張れよ!」
「ちょ、俺も狙ってんのに!」
1ヶ月のうちに何度も耳にする同学年の会話。
人気があるのは男子だけじゃない。
女子もまた憧れの存在として先輩を見る。
本当に、先輩人気だなぁ。
『渚くん?考え事?』
「へ!?あ、いや!!」
『そう?』
先輩と仲良く手を繋いで歩く帰り道。
え?なんで僕みたいなのが先輩と一緒かって?
一言で言えば彼氏だからかなぁ。
でも僕にはそれが悩みでもある。
いやっ、彼氏なのがいやとかそんなのじゃないよ!
むしろそれは信じられないくらい嬉しいことだし!
その、ね。
先輩美人だから僕なんかが隣にいて本当に幸せなのかな?とか思っちゃったりするわけ。
僕といる先輩は、漂う雰囲気がふわふわしてて何をしても嬉しそうだから時々不安になるんだ。
それを考えると、もう僕には先輩ですら視界に入らなくなる。
『なーぎーさーくーんー』
「、!なーにー?」
ほら、言ったそばから。
『やっぱり何か悩みがあるんでしょ?
頼りないかもしれないけど、相談してくれないかなぁ。私、渚くんの役に立ちたいの』
真っ直ぐとした目で見つめられたらもうアウト。
僕はすぐに口を割ってしまう。
_先輩は僕と一緒にいて楽しい?
簡潔に述べる。
数回瞬きをした先輩は突然お腹を抱えて笑い出した。
『ひっ、ご、ごめんね!ぷ、ちょ、ツボにはまっちゃった…!ひー、ふー』
呼吸を慌てて整えて僕と向き合う。
手は繋いだまま。
『あのね?どんな過程があって渚くんがそんな考えを出したか分からないけど、私は一緒にいてつまらない人と毎日一緒に帰ったりしない!』
大好きな笑顔が向けられる。
「だって先輩モテるもん…僕、釣り合わないんじゃないかって…!」
必死に過程を話そうとすると、先輩は口元で人差し指を伸ばした。
内心可愛いなぁと思いつつもしっかり黙る。
『私が告白されるたびになんて断ってるか知ってる?』
「…?」
『ごめんなさい、私には大好きで仕方ない彼氏がいるの』
_私はそれくらい大好きなんだけどなぁ
僕は思いっきり先輩を抱きしめた。
僕、努力しますから
(あなたを毎日幸せで窒息させるくらい!)