勝った。

ハルちゃんとまこちゃんと凛ちゃんと僕でのメドレーリレー。
僕たち4人の大事な400m。
勝ったんだ。

僕たち、僕たち…!!

「このこと、ちゃんとみんなに自慢してやれよ」

その凛ちゃんの言葉で僕は不思議な気持ちになった。

_今、最初に伝えるべき相手は誰だろう。

お母さんたちは会場で応援してくれてるから、もう知ってる。
だって嬉しそうにしてるのが僕の目に見えてるし。

だったら?
だったら誰に報告しよう。

クラスのお友達?

いいや、違う。

"あの人"だ。

一緒に泳いだ3人との会話も程々に、
入賞式の後、僕は急いで更衣室へ向かった。

「渚くん?どこか行くの?」
「ちょっと!用事!終わったらすぐ戻るからね!!」

えぇ!?ちょっと!なんて後ろで呼び止められる声が聞こえても振り返らない。

あの人のいる場所、あの人のいるであろう場所へと僕の足と、思いが動く。

ブレを泳ぎ続けて疲れたはずの足が動く。

走って走って走り続けて。

たどり着いたのは砂浜。

夕日でオレンジ色になった海のそばに、綺麗に立つ、僕の大好きなお姉さん。

「名前ねぇ!!」
「あれ、渚くん?」

僕より2つ年上の、もうすぐ中学2年生になる名前姉ちゃん。
僕の…初恋の人。

「どうかしたの?」
「あのね!僕たち、さっき、水泳のメドレーで優勝したんだよ!!」
「わぁ!すごい!すごいね渚くんたち!私も見に行けばよかったよー」

まるで自分のことのように喜んでくれるこの姿が好きで、

「頑張ったね、渚くん」

なんて言って、僕をぎゅって抱きしめて。

頑張ったね、って今までのことを全部見てきたかのように泣いてくれる。

優しい人…


(名前ねぇ、名前ねぇ)

(……名前ちゃん、名前ちゃん)

あれから4年。僕も成長して中学校卒業。

何かあるごとに、名前ちゃんに一番最初に報告してきた僕は、あの日のことの次に、とても大事なことを報告しようとしている。

これは、家族じゃなくて誰よりも先に、彼女に。

「名前ちゃんあのね」
「んー?今日は何があったのかな?」
「僕、岩鳶高校、合格したよ!!!」
「……へ?」
「4月から……名前ちゃんと同じ高校、通えるんだぁ!」

「そっか……よかったねっ!受験勉強、お疲れ様!お祝い会とかご家族とするんでしょ?」
「うん、赤飯炊くって言ってた。ねぇ、名前ちゃんもおいでよ!」
「いや、でも」
「だーいじょうぶっ!お母さんたちもいいって言ってたから、ね?」
「…ふふっ。もー、仕方ないなぁ」

そうやって困ったように笑うけど、僕がこうやって誰かに自分のことを話すのは、君だけなんだよ?

だって僕は

(1秒でも早く、僕の全てをあなたに伝えたいのです)

あなたに一番に報告したくて