圭と同じ年の彼女は凄くやんちゃだった。

そんな彼女が心配で心配でしょうがなくて、そんな彼女を放っておけないと思った矢先の恋心。
振られてもいい。事務所内ではいつもどうりに振舞おう。
そう自分に言い聞かせて告白した4週間前。結果はイエスだった。

嬉しくて嬉しくて事務所内でイチャついて優太がご丁寧に顔に「怒」と書いた紙を貼って俺たちを紙越しから睨んでくるもんだから、事務所内でのいちゃつきは禁止と言われてしまった。
うらやましいんだろ?お前ら相手がいなくて
俺らがうらやましいんだろ??
ふふふ……

この4週間で彼女はやはりやんちゃで活発なんだと分からされた。

初デートは俺の家でお家デート。

借りてきた映画を見たりお菓子をつまんだり、雑誌を読んだり二人でゴロゴロしたり。

するつもりだったのに彼女が俺の家に来て言った言葉は

「ねぇねぇ因幡さん。隠れんぼしよ!」

その時の俺は確実に間抜け顔だったと思う。
彼氏んちに来て隠れんぼ!?お前いくつだっけ!?

「いいでしょ?」なんて身長の低い名前が擦り寄ってきて…まぁその許しちゃったわけで。
それがまた、まぁすごい隠れんぼでさ。

何故かじゃんけんを三回勝負と1回ごとにあっちむいてホイで鬼を決めて見事に惨敗した俺は鬼をやることに。

10秒数えてもういーかいなんて言ってみれば返事はなくて、なんだか心配になってしまった。

でも考えてみれば返事なんてしてしまったら、所詮ここはマンションの一室だ。
一軒家のように広くないから声でだいたいの場所が分かってしまう。
だから返事をしなかったんだろう。
それでも再確認のために呼びかけてみればやっぱり返事はなくて俺は名前を探すことにした。

今回の勝負、明らかに俺の方が有利だろ…

なんて俺の考えは甘かったらしく、隠れられそうな場所からいやいや無理だろ、なんて自分でも思う場所をくまなく探して行ったっていうのに一向に見つかる気配がない。

玄関のドアが開く音もしなかったから絶対に部屋にはいるはずなんだが…

なんだか不安になってきた。

名前は本当に家の中にいるのか?
もしかして玄関の外にいたりしないのか?
玄関の外だと見つかるかもしれないからマンションから出て行ってないか??

考えれば考えるほどいてもたってもいられなくなって、玄関を覗く。
靴は俺と名前のと、綺麗に並べられていた。

安心したのも束の間、彼女の性格から考える。

…あのやんちゃな名前のことだ、裸足でどこにでも行ってしまえるような奴だぞ?

おそるそおる靴の踵を踏んだまま数歩歩きドアを開ける。

名前はいなかった。

おいおいおいまじでどこ行っちまったんだよ。

あいつに面白くなかった、って言われてもいいから俺はついに負けを認めて出てきてもらう手段に出た。

「な、なぁ名前見つけられそうにないから降参したいんだけどー白旗あげるから出てきて欲しいなぁなんてな?」

沈黙

「おーい。聞こえてます??」
「ばーかっ」
「!?」

後ろから声がして慌てて振り向く。

案の定見つけてもらえず不貞腐れた名前が頬をふくらませて立っていた。

「ごめ」
「因幡さん私と目あったのにどーして見つけられなかったの!」

え?

俺と目があった?

「いや、あの分かんねーんだけど…どこに隠れてたわけ?」
「……クローゼットの中の棚の上」
「あ、そーいやなんか…」

一瞬なんかいる?とか思った場所だけど、え、なんでそんなとこ、名前の背じゃ絶対登ることはできないからスルーしたんだけど。

あぁもう泣きそうな顔しやがって…

「…なぁ名前」
「なによ、文句でも言うつもり!?」
「頼むからさ……俺の目の届く範囲にいてくれ」

(俺と一緒にいるときは俺の視界に入っていてくれ)
(お前が大好きで過保護になっちまう彼氏の願い事)