でもね、きらいじゃないよ、このせかい

「よぉ」

図書室に入ってきたのはリボーンだった。彼を追いかけるようにして黄色い声が廊下から聞こえてくる。私は苦笑し、リボーンは困ったような呆れたような複雑な顔で溜息をついた。イタリアからの留学生のリボーンは、ずいぶんと良いルックスとスタイルを持っていて、おまけに頭も良いという弱点のない男だ。相変わらず人気だなぁと彼の整った甘い顔立ちを眺めていると、目があった私にリボーンが「お前も俺に惚れたのか」と笑った。両手を赤くなった顔の前でぶんぶん振って否定する。

「もう、からかわないでよ」
「悪い」

と言いながらリボーンはひょいと私の読んでいた本を取り上げた。リボーンが私の本を取り上げて読み出すのは日常茶飯事で、私は大人しくしおりを挟んで本をリボーンに渡した。図書室にはもっとたくさんの本があるんだから、わざわざ私の本を取っていかないでほしい。私が他の本を探す傍ら、リボーンはしばらく私の本を読んでいた後、興味が湧いたのか私の隣に立って色々な本を手にとって眺め始めた。ぴたり、とリボーンの動きが止まる。思わず彼の手元に目をやると、「世界の銃器」という何だか危なっかしい本が彼の手にあった。

「興味あるの?」
「いや、この表紙のベレッタM76が実家にあったなと思い出しただけだ」
「!?」

どうやらリボーンは銃器全般について詳しいらしく、私に楽しそうに色々話した。スーツ姿で銃を構えているリボーンを想像するとあまりにも似合っていたので、私は頭をぶんぶん振ってその想像を消した。ぶ、ぶ、ぶぶ物騒だ。うん、ただの趣味。ただの趣味だ。

「なーに、ぼんやりしてるんだ?」
「いたっ」

ばちん、とリボーンのデコピンが額で炸裂した。むっ、とリボーンを見上げればリボーンは笑いを堪えながら赤くなった私の額をさすった。それから少しにやりと笑って、手を銃の形にして私の額に当てる。

「気をつけてないと、狙われるぞ」

ばーん、とリボーンの小さく口が動く。リボーンの悪戯っぽい表情に不用意にも見惚れてしまった私は、自分のほっぺたと耳に熱を感じて、自分が真っ赤になっていることに気づき、しまったと俯いて口に手をやる。何を思ったのかリボーンがつかつかと近づいてきて、私の顎をくいっと上げた。

「そういう顔もやればできるんじゃねぇか」
「り、りぼ…っうにぇ!?」

ちゅっ、と額に軽くキスされた。色気のねぇ声、とリボーンが苦笑する。私と、廊下にいたリボーン親衛隊が同時に悲鳴をあげた。


thank...ユウ様
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