屋上の入り口につながっている階段を音を立てて上がっていく。
無理矢理押し付けられた委員長という名目の元、青峰君を教室に連れ戻さなければいけないのだ。
ため息をついて扉を開ける。

「青峰、君?」

声をかけてみるものの無反応だ。どうしたのだろう?そう思い梯子を登って上へ上がる。
私の目的である青峰君はすやすや眠っていた。少し気が抜けて隣に座る。
いっその事サボってしまおうか。そんなことを考えながら周りを見渡すと風が頬を撫でて心地いい。
天気もいいしここで眠ったらさぞかし気持ちいいんだろう。
少しだけ青峰君の気持ちが分かったような気がした。
ちらりと青峰君のほうを見てみると起きる気配はまったくない。
すこし青峰君の顔を見つめてみるとその顔はとても整っていて少し見惚れた。
なんだかんだ言っても彼は異性に人気なのだ。この前も3年生が会いに来ていた。
今流行っている?草食系男子とかとは正反対で肉食系といえばいいのかな。
彼の目は時々獲物を狙うように鋭く光る。
あの目を見たらきっととらわれたような気持ちになってうごけないにちがいない。
寝顔を見ているとそんなこと全然思えない。
どこか穏やかな寝顔に少しイタズラしたくなって手を伸ばしてみる。

「委員長がまさか人の寝顔を襲うとはな?」

伸ばした手を引っ張られて押し倒される。さっきとは反対だ。

「…いつから起きてたの?」

「さあな。」

にやにやと私に覆いかぶさる様にして青峰君は笑う。捕まれた右手が痛い。

「手首が痛いです。青峰君。」

そう言うと少し力が緩むけど彼の手は離れない。依然として青峰君は私の上で笑ったままだ。

「青峰君。そろそろ離れて欲しいんですが。」

「嫌だって言ったら?」

「人をからかうのもいい加減にしないと怒るよ。」

呆れた様に言い放つと青峰君の顔が近くなって耳元で囁かれる。

「俺は本気、だ。」

声が妙に艶っぽくて吐息が耳朶を震わせる。背筋がゾクゾクして私の口からも吐息が漏れる。

「ちょ、やだったら、青峰くっ、ん。」

自分の口から漏れたなんて思えないほど甘い声が私の耳に届く。
その声に青峰君は目を見開くと一瞬だけ手の力が緩む。
その隙に脱出を試みると拍子抜けるほど簡単にするりと抜けられた。

「青峰君、どうかしたの?」

口に手を当てたまま固まっている青峰君に問うと手を引かれて青峰君の胸に力ずくでダイブさせられた。
思いもよらぬその行動にびっくりして離れようとすろけれど先ほど以上に力が強くて抜けられない。

「…小さいな。お前。」

「小さくなんてないです。青峰君大きいんだよ。」

どきどきする。痛い位にどきどきする。
顔が赤くなっていくのが分かって恥ずかしさで一杯一杯になる。

「体とか細くて力入れたら壊れちまいそうだ。手首、だって、」

手首に手が添えられる。
添えられる力は私でも振り払える力で―――――壊れ物を扱うような優しい力加減だということに心臓が破裂しそうな程どきどきしてますます顔が赤くなる。

「壊しちまいそうで、怖い。」

どこか震えたようなその声に吃驚して視線を上げると困ったような顔をした青峰君と目が合う。

「大丈夫、だよ。」

「っは?」

「女の子だからってそんなに簡単に壊れたりしないよ。」

そう目が合ったまま呟く様にに伝えると青峰君はびっくりしたような顔になって微笑む。
その顔に少しだけ安心して息をつくと頭を抱きこまれてまた心臓が痛いくらいどきどきしする。

「青、峰君?」

「お前を好きになるのが怖い。」

囁かれるように呟かれた言葉が頭の中で反響してびくりと体が震えた。

「お前が他の誰かの物になるなんて考えたくもない。けど、どうしたらいいかなんてわからねぇんだ。」

彼はきっと人のを好きになったことなんてないんだろう。だから怖がるのだ。
怖がらなくてもいいのだとうまく伝えられない私も人を好きになるのを怖がっている青峰君もどちらも幼いなぁと思いながらも目をつぶって私も彼を抱きしめ返した。

きみを好きになるのがこわい


thank...未来様
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