威迥は弌の膝の上に、向かい合うようにして座っていた。威迥は、先日負ってやっと塞がってきた弌の脇腹にある銃痕ををなぞっていた。弌はと言えば、咎めるでもなく好きにさせたままでいる。

「ねぇ、弌」
「何」
「おれを遺して死なないでね」
「お前を遺して俺が死ぬわけないだろ?」

 弌が応えると、威迥はそうだよね、と自分に言い聞かせるように何度も繰り返していた。
 
「ねぇ、弌、すき」
「うん、好きだよ」
「すき」
「愛してる、はないのか?」

 訊かれた威迥は、困った様な顔をして俯いた。弌は、威迥の髪をすくようになぜた。
 暫くすると、威迥は躊躇いがちに云った。

「…すき。でも愛してる、はわかんない」
「なんで?」
「弌は弌だけど弌は禹伊だから、…弌は好きだけど、弌は…。ごめん、よく、わからない」

 威迥は戸惑いながらそういった。きっと、答えが出ることはないのだろう。

「そっか」
「ん、…ごめんなさい」
「いいんだよ」

 そんなことより、一生懸命悩んでくれる威迥がいとおしかった。
 泣きそうな顔の威迥に口づけを落とすと、威迥はほおを染めて困ったように笑った。
 この気持ちに名前なんていらない。
 今ある幸せを大切に生きて行こうと、弌は一人心に誓った。



(好きな人一人守れないなんて)





10/12/07

人格は別でも体は一緒って云う話と、お互いが大切って云う話。
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