他人の匂いのするベットから、ゆっくりと軋む体を起こした。裸の体は酷く、重く、痛む。 横では同じ布団の中で男が穏やかに寝息をたてていた。布団から這い出し、自分より頭三つ以上でかい男の上に馬乗りになる。ちょうど鳩尾辺りに座り、手を男の体に乗せ、這わせ、首を探す。 見つけ出した太い首に両手を添えて、ぐっと絞めた。 「お前は絞殺もするのか」 首を絞められているのに男は平然と話す。 「知ってる?」 男の問いには答えず、問いを返す。笑ったのか、男の喉がクツクツと手の中で動いた。 「人間はどんな苦痛にも快楽を見出すんだって。どんなに痛くとも、苦しくとも、全て快楽にかわるんだって」 首を絞める手に力を入れながら、男の薄い唇に触れるだけのキスを落とす。 「だから、絞殺は駄目。じわじわと殺すなんて駄目。殺すなら一瞬で、苦痛だけを与える」 気持ち良くなってきた?と、男の耳元で囁くと首に噛みつかれた。ちくりと痛い。そのまま、腰を引き寄せられる。 「でも、残念、時間切れ。仕事の時間だ」 男の首から、名残惜しいが手を離す。ベットから降り、床に落ちていたパーカーに袖をした。 「俺はゆっくり殺したいと思うがね」 男がむっくりと体を起こして言う。長座の体勢になった男の首に、赤い手形が見えてゾクリとする。 「あんたに殺されるやつは幸せだな」 男の首に顔を寄せ、鬱血痕にキスをする。濁った奇麗な赤。 「そうだ。あんたを殺すときは絞殺にしてやるよ」 (最期にとびっきりの快楽を) |