彼女を失くしてから五年、わたしたちの命はおそらく二十余年のものでしょうから、その四分の一をわたしはないてすごしてきたことになります。しかし、まだまだ、到底たりうるものではありません。わたしのみじかい命すべてを燃やしつくしたとしても、泪がわたしの鶸色の目からながれることはないのですから。

「いつまでないとるつもりや、マヒワ。もう、十二分にないたやろう」

 わたしはこの鶸色の目から、マヒワという名でよばれております。その名をくださった長老殿が白くながい眉をゆがめて、ちいさなため息をこぼされました。長老殿はわたしたちの寿命よりはるかにながくいきておられます。すこしまえから境界にある街に住まれていたはずですから、たれかがわたしのことを心配して、(わたしたちがあちらにむかうのはすこし難しいのですが)長老殿をたずねてくれたのでしょう。そして、長老殿はわざわざわたしのところまできてくださったのです。うれしいことです。

「いくらないたってたりません。彼女はもういないのですから」

 でも、こればかりは、いくらわたしよりながくいき、おおくの知識と経験をおもちである長老殿でもとめることはできません。長老殿には彼女を黄泉がえらせることはできません。わたしもそれをもとめている訳ではないのです。ただ、彼女をおもい、なげいていたいのです。彼女のためではありません。わたしのために。
 長老殿の縹色の目がかなしくゆがんだようにみえました。

「すきなだけかなしむとええ」

 ながい沈黙のあと、そうおっしゃった長老殿にあうことはそれきりありませんでした。

 

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