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03-01

彼女の仮入部期間も気付けば一週間が過ぎていた。
最初は練習ばかり見ていた彼女もやり方を覚えてきていた。

「みなさーん、お疲れ様でーす!」
「おー、サンキュー。」
「いつも気が利くなー。」

…それ作ったのも、途中まで運んだのも私なんだけどね。

彼女が覚えた“やり方”。
それはドリンクの作り方や洗濯の仕方、道具の置き場や使うタイミングを覚えた、という意味ではなく、選手たちとうまく絡む方法。
つまり、どうすればおいしい所を持っていけるか、だ。

ドリンクを作る時はいなかったのに、作り終わればどこからか突然現れて、選手たちにドリンクを持っていくなんてしょっちゅうで。
給水ボトルを一人で運んでいたら、グラウンド手前で半ば無理矢理奪われたり。
他にもあるけど、まさにドラマとかで見る小悪魔な女の人、そのもの…だと思う。
最初こそ、私も気にしてなかったけれど、ここまで露骨にやられると、腹が立ってしまう。

選手たちに気があるのは自分の方じゃないか。

そう思わずにはいられなかった。
それでも、それをやめさせないのは選手たちに迷惑をかけられない、そんな気持ちがあったから。

選手たちも練習に集中しているし、ドリンクを作ったのが誰かなんていちいち気にしていない。
私も作ったのを褒めてもらいたいわけではない。
選手たちのために働くのは、私たちマネージャーの当然の仕事。

マネージャーは選手のために働いているのに、そのことで揉めてしまえば、本末転倒。

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