今日は7月15日。
大事な大事な恋人の生まれた日。
私たちは十年以上も前に卒業した小学校へと足を運んでいた。
「ねぇ、本当に勝手に入ってきちゃって大丈夫だったの?」
「祝日で休みなんだし、大丈夫っしょ。」
小学生の頃から変わらない楽天家な太一にちょっとだけ不安になる。
まぁ、ここに来るまで誰とも会わなかったし、先生たちも今日ばかりは休んでいるんだろう。
「なんか、懐かしいね。ここ。」
「俺、告白されるときにしか来たことない。」
「うっわー。なにそれ、自慢?」
私たちが来たのは"告白スポット"として有名だった桜の木の下。
真夏のこの季節に桜なんて咲いているはずもないけれど。
「んーん。俺、その時から純のこと好きだったんだよなー。」
「…へぇ。」
「でもさ、俺、意気地なしだったから、関係が変わるのが怖くて、告白なんかできなくってさ。」
その気持ち、私はよく知ってるよ。
太一が私を好きだったように、私もずぅっと太一のことが好きだったから。
何回、周りに「二人は絶対両思いだよ!」と言われても、その一歩を踏み出すことが出来なかった。
「それがさ、ちょっと後悔してることだったりすんだよな。」
「ここではないけど、告白してくれたのに?」
「ん。だってさ、ここで結ばれたら、永遠の愛を誓えるんだろ?」
なんてロマンチストなんだ。
でも、たとえここで告白なんてされなくったって、私と太一が離れることはないと思うけどね。
「だから…もっかい言わせて。」
「え?」
「純。俺は純のことが好きだ。俺と付き合ってください。」
「よろしくお願いします?」
「なんで疑問形なんだよ。」
「いや、だってもう付き合ってるし。」
「それもそっか。」
そうやって笑う太一の顔は小学生の頃のままで。
やっぱり好きだなぁって改めて思う。
「それにしても、わざわざここで告白して、永遠の愛を誓うなんて…なんかプロポーズされちゃったみたい。」
「…俺はそのつもりだったけど。」
「えっ?!」
「や、まだ指輪とか買ったわけじゃないけど、俺はずっとそのつもりだったから。」
太一の言葉に自然と涙が溢れてきた。
いくらずっと一緒にいるつもりでも、私だけがそう思っているだけなら、離れる時は離れてしまう。
だから、太一も同じ気持ちだって分かって、嬉しくて、涙が止まらない。
「ったく。こんなんで泣いてちゃ、本番どうすんだよ。」
「だ、だってっ…」
言い返すために顔を上げれば、目の前には太一の顔があって。
唇にチュッと太一のそれが当たった。
桜の木の下で告白すると、永遠の愛を誓える。
その効果がどれくらいあるのかは知らないけれど、間違いなく私たちは今、永遠の愛を誓った。
これからもずっと一緒に歩んでいけますように。
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