暑い暑い炎天下の下、行われているのは体育大会。
みんなよくやるなーとやる気のない私は救護班用のテントの下で休んでいた。
「こんな所にいたの?」
「あ、空。」
「自分の席に戻らなくていいの?こんなところにいたら、太一が困ると思うけど。」
「生徒用の席、屋根ないから暑いんだもん。てゆーか、なんで私がここにいたら太一が困るの。」
「純、知らないの?うちの障害物競争。」
「なにそれ。」
空がため息をついた時、遠くでピストルの音が聞こえた。
グラウンドを見ていた空の視線を追えば、話題の人物がなにかを探していた。
「これって、障害物競争じゃないの。」
障害物競争のはずなのに、選手たちは白い紙を片手になにかを探している。
「借り物競争も混ざってるのよ。うちの障害物競争は。…太一!」
いつの間にか近くまで来ていた太一に空が合図を送れば、なぜか私の手が引かれた。
「空!サンキュー!純、走れ!」
「ちょっ…なに!」
太一は私を連れて、一目散にゴールを目指す。
「おぉーっと。八神選手。ついにお相手が見つかった模様です。そのままゴールまで駆け抜けていきます!」
この盛り上がりは一体なに。
答えが分からないまま、ゴール前に設置されていたセットに辿り着いた。
太一は白い紙を待ち構えていた審判に差し出す。
「では、八神選手。お題クリア、お願いします!」
「えーっと…純。もう気付いてると思うんだけど…あー、やっべ!マジ緊張する!」
「ねぇ、紙になんて書かれてるの?私が持ってるもの?てゆーか、お題ってなに?」
「…知らねぇの?うちの障害物競走。」
空も太一も一体なにを言ってるんだ。
さっぱり分からない。
「うちの障害物競走、毎年一番内側の紙は借り物が"好きな人"で、お題が"好きな人とキス"なんだよ。」
「ほう。」
「だから、これに出てる奴らは告白するために出てる奴が多いってこと。」
「で、それと私になんの関係があるの?」
「だーかーら!俺がその内側の紙を取ったんだよ…俺は純のことが好きなんだっつの!気付けよ、バカ!」
太一がそう言えば、生徒たちからキャーやらワーやらオーやら歓声があがる。
私は予想外の出来事にパニック状態だ。
「あ、え…てゆーか、バカって…!!」
「というわけで、お題クリアさせていただきます。」
言いたいことはたくさんあったのに、反論する間もなく、チュッと私の唇は奪われた。
周囲の歓声は大きくなるばかりで。
「一着は八神選手でしたー!」
一着だったんだー。
まだうまく回ってない頭でそんなことを思った。
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bkm