「純。」
見上げれば青空が広がる屋上。
サンサンと日差しが照りつける中、ごろんと大の字で寝転んでいる純に呼びかけても返事はない。
不思議に思い、顔を覗き込めば、すやすやと寝ているのが分かった。
「女のくせにこいつは…」
純のそばに腰を下ろしたとき、授業開始を告げるチャイムが鳴り響いた。
授業が始まっても、起きそうにない純。
「純。純ー。」
名前を呼んでみても、体を揺すってみても、起きる気配がない純に次の授業に出るのを諦めた。
なにをするわけでもなく、ただ空を見上げ、純の手に俺の手を重ねた。
それだけで、ゆっくりと過ぎる時間が不思議と心地よかった。
まじまじと純の寝顔を見るのは初めてだ。
ちょっと日に焼けた肌とか、長い睫とか、薄く色づいた頬だとか…
それから、プルプルしてそうな唇とか。
寝ている純にそんな気がないのは百も承知だけど、誘ってるんじゃないかと思えてしまう。
俺も男だ。
据え膳食わぬはなんとやら…
両手を合わせて、小さくいただきますと呟いて。
寝ている純に口づけた。
「…太一に寝込み襲われちゃった。」
「純が誘惑してきたのが悪いんだろ。据え膳食わぬは男の恥、だろ?」
「ふぅん。じゃあ、もう一回。」
唇を前に突き出した純に吸い込まれるようにキスをした。
「…おやすみ、太一。」
「ん。」
日差しが照りつける中、俺たちは眠りについた。
遠くで授業終了のチャイムが聞こえた気がした。
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bkm