「…そのままだよ。もう、太一とはさよならしようと思って。」
「ふざけんなよ…!なんで勝手にそんなこと…!!」
「…勝手?じゃあ、太一はどうなの?私、一人で生活してる気分だった。家に帰って来てもすぐ寝るだけ。むしろ、家に帰ってこないことの方が多かった。」
「それは仕事が…」
「分かってる。分かってるよ、太一がデジモンたちのために頑張ってるのは。でも…ただいまも、おかえりも…普通の挨拶が出来ないような家にいたくないっ…もう、終わりなのっ…」
太一の仕事は朝早く、夜遅いというハードスケジュール。
朝はバタバタ、夜はクタクタでちゃんとした会話がされていなかった、という事実。
太一はそのことに初めて気付いた。
今更、気付いても遅いのかもしれない。
それでも…
「ちょっと、太一っ!」
「ごめん…ごめん、純…」
太一は純のことを思いきり抱きしめた。
「純、さよならなんて言うなよ…俺はお前がいてくれないと、困るんだ。」
「だったら、なんでっ…同じ家にいて顔も合わせない日だってあった!そんなのっ…」
「俺、甘えすぎてた。純は絶対いなくならないって高を括ってたんだ。なぁ…俺のことはもう嫌いか?」
「…嫌いじゃないから、会いたくなかったのに…会うと離れ辛くなる…」
そう言いながらも、純の腕は太一の背中に回された。
「ただいま、純。」
「うん。…おかえり、太一。」
二人は仲良く手を繋ぎながら、自宅…
もちろん、今までもこれからも二人で住む家へと足を向けた。
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