夏色ドロップス | ナノ

act.03

お腹も膨れ、ほどよく睡魔が襲ってきたため、電車内で眠ることにした。
いつなにが起こるか分からないこの状況。
タケル以外の男子が交代で見張りをすることになったのだが、タケルはどうやら自分が見張りをやらなくていいというその決まりに納得がいかないようで、珍しくヤマトに対しても反発していた。

「僕、平気だよ!」
「いいから、お前は休め。」
「僕だってできるもん!」

一歩もひかない両者を見て、純はある提案を口にした。

「タケルくん、電車の中の見張りをお願いしていい?一人で大変だけど、できる?」
「…うん!僕、がんばる!純ちゃんたちのこと守る!」

ヤマトは一連のやりとりに苦笑いしながらも、サンキュと呟いた。
その直後、ガブモンの毛皮を無理矢理脱がそうとした太一と一悶着あったが、太一、ヤマト、光子郎、丈の順で見張りをすることに決まった。
見張り以外は電車の中で眠ることになったのだが、純はなかなか寝付けず、いつの間にか寝ていたタケルたちを起こさないように電車から降りた。

「太一ぃ、アグモーン。」
「あ、純だぁ。どーしたのー?」
「眠れないから、私も見張りに参加しようかなーって。」
「ロッテリアは寝たのか?」
「うん。二人で仲良く寝てるよ。」
「そっか。」

そこから話が続かなかったが、決して苦痛ではなかった。
そして、アグモンもそれは同じだったようで頭を撫でると嬉しそうに笑った。


太一が眠気覚ましに顔を洗っていると人の気配を感じた。
振り返ると、ヤマトがいた。

「なんだよ、ヤマトか。どうしたんだよ、交代にはまだ早いだろ?」
「眠れなくてさ。…さっきは悪かった。」
「い、いや。俺も…」
「俺、いつもこうだから…だから、タケルもお前の方になつくんだろうな。」
「あのさ、タケルとお前って…」
「兄弟だよ。親が離婚したから、別々で暮らしてるんだ。」

それだけ言うと、ヤマトは突然走り出した。
太一も追いかけようと思ったが、なんて声をかけていいのかが分からず、純とアグモンの待つ場所へと戻るのだった。
純たちと合流した頃、太一の耳に綺麗なメロディが届いた。

「ハーモニカの音?」
「きっとヤマトが吹いてるんだよ。綺麗な音だよね。」

ハーモニカの音に合わせてリズムをとる純を見て、ヤマトとの仲が特別なものだと言われているようで、悔しかった。


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