夏色ドロップス | ナノ

act.01

純が泣き止んだのを見計らい、太一は口を開いた。

「ここは、どこだ?」
「足元は砂よ。」
「砂漠かもしれない。」

耳を澄ませば、波の音が聞こえてきた。
波が聞こえるということは、海の付近であるということ。
純が確認するように辺りを見渡すと見覚えのある電話ボックスが目に入った。
ボロボロに壊されているものの、色や作りは間違いなくあの電話ボックスだ。
ここは最初にアグモンがグレイモンへと進化したあの砂浜だった。
子どもたちは重い腰を上げ、歩き始めた。

「またファイル島に戻ってきたっていうことは…」
「なにか意味があるのか?」
「意味があるからファイル島に戻ってきたんじゃないの?」
「でも、どういう意味があるんだろう…」

純の言葉に被せるように助けを求める声が耳に飛び込んできた。
声のする方を見れば、海面に水しぶきが上がっており、誰かが溺れているようだった。
海辺にはカヌーがあり、みんなで救助に向かう。

「純はデジモンたちとここに残ってろ。」
「で、でも!」
「大丈夫だから。な?」

太一とヤマトにそう言われ、純はデジモンたちとともに砂浜に残っておくことにした。

8人の子どもたちはヒカリとタケルを先頭にカヌーへと乗り込み、救出に向かった。
水しぶきに近付いたとき、太一たちの前に現れたのはシェルモンだった。
助けを求める声や水しぶきは囮だったのだ。
シェルモンはジワジワとカヌーとの距離を縮めていた。

「ロップモン、テリアモン!助けなくちゃ!」
「待って!」
「ここはわてらに任しとくんなはれ。」
「プカモン、進化!ゴマモン!」
「タネモン、進化!パルモン!」
「モチモン、進化!テントモン!」
「ピョコモン、進化!ピヨモン!」

四体は連携して子どもたちを助け、シェルモンを撃退した。
子どもたちは無事に岸へと戻っていた。

「今は疲れてるけど、強くなってるみたいだね。」
「あぁ。前にシェルモンと戦った時はアグモンがグレイモンに進化して、ようやく勝てた。なのに、今日はアグモンが進化しないでも勝てた。」
「みんなが力を合わせて闘ったからだよ!」
「でも、みんなで戦うよりグレイモンの前のパワーの方が強かったはずだ。確実に強くなってる。」

いつの間にか強くなっていたデジモンたちは太一の言葉にいまいちピンと来ていないようだった。

「純ー、ぼくたち強くなったー?」
「純はどう思うー?」
「うん。強くなったと思う!」

子どもたちが談笑していると、急に太陽の光が強くなった。


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