夏色ドロップス | ナノ

act.02

そして、ついに我慢の限界が来てしまった。

「「「いったーい!!引っ張らないでー!!」」」

電車内は一気に静かになり、視線は必然的にロップモンとテリアモン、ピョコモンへと注がれる。
赤ちゃんはとつぜんの声に驚き、三匹から手を離した。

「喋った!あのぬいぐるみ、喋った!」

純を始め、子どもたちの背筋に冷や汗が溢れ出す。
なんとかしなくては、と頭をフル回転させた純は太一の膝の上にテリアモンを置き、ロップモンを赤ちゃんの目の高さに合わせた。

「そんなにきつく引っ張らないでー!僕も痛いんだよー?」

それを見た空と太一も瞬時にその作戦を理解し、純に話を合わせた。
その状況を見た乗客の人たちも腹話術と信じて疑っておらず、なんとかその場をごまかした。
しかし、それを見ていた子どものひとりが同じものが欲しい!と声をあげた。
もちろん、デジモンなんて売ってるはずがないが、売り場を聞かれて、答えない訳にはいかない。
純と空は曖昧に目線を泳がせ、

「「ね、練馬の大根デパート…!!」」

今、着いたばかりの練馬、から連想したデパートの名前を口にした。
練馬に大根デパートなどあるはずがないが、乗客は扉が開くや否や一目散に電車から降りて行った。
純たちの乗った車両には八人の子どもたちと九匹のパートナー以外、誰もいなくなり、全員で盛大なため息をついた。
先ほどの一件が落ち着いたこともあり、子どもたちには一気に睡魔が押し寄せ、気付けばデジモンたちも含め、全員が眠っていた。

子どもたちが目を開けたとき、着いた駅は新宿で寝過ごしたことは明らかだった。

「中野坂上まで戻る?」
「いえ、確か新宿からでも丸ノ内線に乗り換えできるはずです。」

子どもたちは乗り換えのため、光子郎を先頭に足を進めた。


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