夏色ドロップス | ナノ

act.02

しかし、バスの行き先はあくまでお台場。
バスは光が丘を通るものの、止まりはしない。

「光が丘に行かないと…」
「よーし!」

太一はコロモンを抱えたまま、藤山先生の元へと足を進めた。

「先生!途中下車していいかな?」
「途中下車?ダメダメ。先生はみんなを無事に連れて帰る義務があるんだよ。」
「そんなこと言わないでさー。ねぇ、頼むよ。」
「先生、光が丘団地まででいいからお願い!」

太一の様子を見ていた純、そして他の子どもたちも必死にお願いするが、藤山先生は簡単には許可を下ろさなかった。
いまだに渋っている藤山先生を見て、純とヤマト、そしてタケルはアイコンタクトを取った。

「先生、お願いします!」
「どうしても見ておきたいんです!両親が離婚する前、家族仲良く暮らしていた場所を!」
「この二人、本当の兄弟なんです。けど、今は離れ離れに住んでて…親同士も仲が良くて、私も兄弟みたいに仲良くしてたのに…」
「タケル!」
「お兄ちゃん!純ちゃん!」
「タケルくんっ!」

純とヤマトとタケルは強く抱きしめあった。
妙に説明じみた胡散臭いセリフではあったが、それに喚起された丈が一歩前に出た。

「先生!お願いします!光が丘で降ろしてください!僕が責任を持って送り届けますから!」

藤山先生は六年生の丈が付いているということもあり、親に連絡をすることを条件に渋々途中下車を許可した。

「おい、いつまでやってんだよ。」

いまだにきつく抱き合っている三人に太一は呆れたように声をかけた。
もちろん、ヤマトとタケルへの嫉妬も含まれていたのだが。
純たち三人はそれに気付いてはいなかったが、その声をキッカケに抱き合うのをやめた。

「どういうこと?」
「ああでも言わなきゃ、許可してくれそうもなかったからな。」
「嘘も方便ですよ、丈先輩!」
「じゃあ、お芝居だったのか?」

丈は純たちの行動が嘘だと分かり、怒りを露わにしたが、それがキッカケで許可が下りたことは紛れもない事実。
子どもたちはそれぞれのパートナーを抱えると、全員で同じバスに乗り込んだ。


prev next

bkm
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -