夏色ドロップス | ナノ

act.02

しばらく歩くと、自宅のある団地の前まで辿り着いた。
太一は純を送るため、純の家のあるマンションへと足を進める。
とは言っても、純の家も同じ団地内にあるため、太一の家からさほど離れていない場所である。


「太一、送ってくれてありがとうっ!」
「どういたしまして!…それより、この石田って…」

太一は純の家の隣の表札に石田と書かれていることに気が付いた。

「ここ、ヤマトの家だよ。うち、隣同士なんだ。」
「…偶然?」
「偶然ってゆーか…親同士が昔からの知り合いで、たまたま隣が空いてたから借りたんだって。」
「そ、っか…いいな、ヤマト…の隣の家!」

思わず、本音を口にした太一はそのことに気付き、すぐ誤魔化した。
純は太一も今度遊びにきてね、と言うと家の中へと入っていった。
太一は閉められたドアを眺め、小さくガッツポーズを作った。


「ただいまー…誰もいない、の?」

一応、挨拶はしたものの、返事がくることはなく、家の中には誰もいないと証明された。
共働きで滅多に家に帰ってこれない仕事をしている両親。
仕事のことは理解しているつもりだ。
しかし、あれだけ家を空けていたのだから、心配して両親のどちらかでいいからいるんじゃないか、と思っていた純の希望はあっさり打ち砕かれた。
室内もなにも変わっていない。
心配すらされていなかったのだろうか。
そう思うと、言いようのない悲しみが一気に襲ってきたのだ。

「純ー?どうしたのー?」
「泣きそうな顔してるよー?」
「あ!」

チョコモンとグミモンの顔を見るや否や、純は走り出した。
そして、石田家のインターホンを押す。
返答はない。

「……もしかして、ヤマトたちはこっちの世界に戻ってきてないのかな…」
「僕たちだけ、こっちに来たのかも…」
「あの歪みに巻き込まれなかったから…」

ふいに思い出した仲間たちのこと。
あの空間の歪みに吸い込まれたのは太一と純、そしてパートナーたちだけのはず。
だとすれば、ヤマトたちはまだデジタルワールドにいるということだ。

「チョコモン、グミモン!太一たちの所に行こう!」
「「もっちろーん!」」

純は落ち込んでいた気持ちを切り替え、簡単に荷物を用意すると、太一の家へと向かった。


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