夏色ドロップス | ナノ

act.02

光子郎が文字を書いたり消したりすると、電気が付き、なにもなかったはずの空間に地図が現れた。

「壁に書いたプログラムでこんなことが出来るなんて…コンピュータの中じゃあるまいし…」
「この世界全体はデータやプログラムが実体化した世界なんじゃないか、って僕は思ってるんですよ。」
「じゃあ、私たちもデータってこと?触った感触もあるのに?」

光子郎の推理によれば、生身の体はまだキャンプ場にあり、デジモンたちはデジタルモンスターという名前の通り、デジタル上の存在ということらしい。

「じゃあ、ここはゲームみたいなものなの?」
「そこまで簡単なものじゃないけど、似たようなものです。」

光子郎は再びパソコンを操作すると、子どもたちの頭上に球体が現れた。

「全体が見えるようにしました。これにアンドロモンの街で見たプログラム、それにゲンナイさんからもらった地図を合わせる…」
「地球、みたい…」
「地球と同じくらいあるな。」
「むしろ、まったく同じなんです。」

光子郎によれば、先ほどのメールの差出人は光子郎がよく訪ねていたホームページのある場所。
地球のネットワークと今いる世界のネットワークを合わせるとピタリと一致したのだった。

「どういうこと?」
「ここはデータだけの世界。つまり、ゲームやコンピュータの中と同じ世界なんですが、地球から遠く離れたどこかというわけじゃなく、僕たちの地球のコンピュータネットワークそのものなんです。つまりこのデジタルワールドは僕たちの世界と同じ場所にある地球の影といってもいい世界なんです。」
「ここは地球だったのか…」

地球であって地球でないデジタルワールド。
その事実は分かったものの、現段階で元の世界へ戻るための解決策はなく、差出人を助けることを優先することにした。
しかし、救出に向かうと決めた矢先、差出人のいるピラミッドにエテモンが先に侵入していくのを目撃した。
そのため、子どもたちは近くの洞窟で一夜を明かすことにした。

「太一、交代の時間よ。」
「俺も明日に備えて寝るか。」
「ごめんね、太一…結局私の紋章のためにメールをくれた人、助けに行くんだよね?」
「そういうことになるかな。ま、俺って困ってるやつ放っとけないタチだから!」

太一は空の異変に気付くと、急に真面目な顔になった。

「もし、先に見つかったのがお前の紋章だったら…こんな風に悩んだりしたか?」
「きっと考えもしなかった…」
「だろ?それに今の俺たちはただのデータだ。深刻に考えてもしょうがねぇって!」

太一は子どもたちの元に戻ると、純が寝ずに起きていることに気が付いた。

「純、寝てなかったのか?」
「うん、眠れなくて…」
「どうせ、純も自分の紋章のせいで、とか思ってんだろ?そんなこと誰も思ってねぇから、心配すんなって。」
「…うん。」
「さ、もう寝ようぜ!明日は忙しくなりそうだしさ。」

純は太一の横で目を瞑ったが、ほとんど眠れなかった。


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bkm
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