赤い薔薇にはご用心

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「マクゴナガル先生」
 呼び止められて、振り返る。そこには今日ホグワーツに入学したばかりの、可愛らしい一年生が立っていた。
「何ですか」
 できるだけ威厳があるように答える。何故なら、この私も本日ホグワーツの教授として新しい生活を送り始めたばかりなのだ。若い女教授だからと、侮られてはならない。子どもは特にそういった空気に敏感だ。
「これを」
 差し出されたのは、一本の薔薇だった。血のような赤い薔薇。いったい、どこで見つけてきたのだろうか。そもそも、何故私に?
 わけがわからず眉をしかめていると、一年生はがっかりした様子になった。
「先生、薔薇はお嫌いですか?」
 上目遣いで尋ねるその子は、とても愛らしかった。うるうると瞳が光っている。何て可愛らしいのだ、と思わずにはいられない。
「……そんなことはありませんよ。ありがとう」
 すると彼はたちまち笑顔になった。
「先生、僕の愛情を受け取ってくださってありがとうございます!」
 ――え?
 不意を突かれた。一瞬のことだった。ちゅ、と可愛らしい音がした。
「僕と、結婚してください!」
 私はあまりのことに、石みたいになってしまった。
「もちろん、僕が成人してからです――愛しています、ミネルバ」
 まるでプロポーズだ。いや、プロポーズなのだろう、これは、だが、しかし……。
「それでは、おやすみなさい」
 彼は固まった私にもう一度口付けると、愛らしい笑みを浮かべて去って行った。私はぽかんとした表情でそれを見送ることしかできなかった。
 この可愛らしい生徒に、結局は七年間ずっと翻弄されることになるのだが――それはまた別の話だ。

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