狼少女

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「あんたなんか、大っ嫌い!!」
「こっちこそ、お断りだ!!」
 私ははあはあと肩を上げ下げして、涙目になりながら最後にもう一度言った。
「大っ嫌い!!シリウスの馬鹿!!ばかばかばか、ばあーか!!」
 そしていーっと口を広げて見せ、踵を返して走り出した。
 シリウスは幼馴染だ。小さい頃からのお付き合いで、とても仲良しだった。でも、最近のシリウスは何を考えているのかさっぱりわからない。お母様には口答えばっかりしているらしいし、今日も派手に喧嘩してきたらしい。
 それでも、最初は普通だった。駅の前で偶然見かけたシリウスに手を振ると、彼は気怠るげに「よお」と返事をしてくれた。人混みが苦手なシリウスのお母様とお父様は駅の前で別れてきたのだという。それからしばらく「元気?久しぶりだね」などと呑気に話していたのだが――。
 喧嘩の原因は、寮のことだった。私たちは、これからホグワーツに向かう、ピカピカの一年生なのだ。私はお父様とお母様のいたスリザリンに入りたかった。伝え聞いたその素晴らしさを夢中になって語っていると、シリウスは無表情で一言、言った。
「くだらねー」
 その一言が引き金だった。元から喜怒哀楽が激しい私とシリウスはやっぱり激しい口論になり、ますますヒートアップしてしまった。やがて汽笛が鳴り、収拾がつかなくなって、私は思わず「大っ嫌い!!」なんて言ってしまったのだ。ああ、後の祭り。
 シリウスと一緒に仲良くおしゃべりできて嬉しかったのに。どうしていつも喧嘩になってしまうのだろう?
 泣きながらコパートメントを探す。とても惨めだ。シリウスの馬鹿――!
「――おいっ!」
 むんずと腕を掴まれた。
「そっちは監督生用だ。書いてあるだろ!」
 シリウスだった。恥ずかしさで引っ込みがつかなくなる。
「離してよ!馬鹿、嫌い!」
「バカバカ言うんじゃねぇ!それに俺は嫌いじゃない!」
 その言葉に動きが止まった。きょとんとした顔になったのだろう、シリウスが呆れ顔で言った。
「わかってるだろうが。ほら、行くぞ!」
 そのままずるずると引きずられるようにして移動する。道中、彼がボソリと呟いた。
「お前の嫌いは反対の意味だって、俺にはお見通しだからな」

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