1.とび色の髪

 教壇からは意外と生徒全員がよく見える。中でも一年生の最初の授業は壮観だ。不安と興奮、緊張と期待に皆目をキラキラとさせている。あまりの初々しさに思わず口元を綻ばせてしまうこともしばしばだ。
教室に入ると、私は静かに、だがよく響くように名を呼ぶ。反応は色々だ。震える声の者、自信満々の者、ぼうっとしている者……。面白いことに、そこで大体の人となりがわかってしまうものだ。
 私は順々に名を呼んでいった。そしてひとつの名前を目にして、何とも言えぬ気持ちになる。少し深く息を吸い、唇を開く。
「リーマス・ルーピン」
 とび色の髪が揺れた。痩せぎすの、繊細そうな少年。
 校長から話は聞いている。あまりに哀れな、しかし幸福な少年。この少年がホグワーツで何を得、何を学ぶか。それは他の生徒より貴重なものとなるだろう。
 何事もなかったかのように次の生徒の名を呼ぶ。またとび色の髪が揺れるのを見つめながら。
 彼に幸多からんことを。
 贔屓というよりは憐れみに近い祈りを、心の中で唱える。誰にも知り得ない一瞬の呪文は、緩やかな闇を迎えようとする教室に溶けて行った。




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