この腕の中。今だけ、本音を吐いても良いだろうか。
──本当は、不安で仕方がない。
俺はいつだって劣等感の塊だった。仕方ないだろう。おまえだってあいつを知ってるだろう?
昔からあいつの方が何でもできた。俺は比べられて育った。そのせいで、人の顔色を窺うのは俺の方が上手くなった。……自信がなかったから。
この勢力に入ったのも、全てはあいつを見返す為。父と母に見せつける為。権力を握って認められたかった、ただそれだけ。……おまえはそれを聞いても腹を立てないんだな。不思議な女だ。あんなにあの方に心酔しているというのに。
おまえの温度は心地よい。女は皆こうなのか?俺は母と触れあうことなどなかったから、よくわからない。
──いや、きっとおまえだからこのように思うんだな。
笑うな。……俺は可愛くなど無い。
ただ、情けないだけ、甲斐性のない、脆弱な男だ。
──そう、だから変わらなくてはならない。
月が昇れば、任務に出かける。あの方のために。あの方の望む先には、確かに俺たちの平穏な生活があると、そう信じている。弁解がましいか?でも、それも事実なんだ。
──だから、お願いだ。もう少しだけ、この腕の中で眠らせてくれ。
(Regulus Black)
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