The Eccentrics

 愛してるなんて、そんな馬鹿みたいな台詞はいらない。例えそれが事切れる寸前であったとしたも。だって、君には似合わないだろう。慣れてもいないことなんかするな、絶対。それにこっちだって、そんなこっ恥ずかしい言葉にいったいどう返事しろって言うんだ。馬鹿野郎。のしつけて返す。
 そもそも、いちいち言葉に託さなきゃ伝わらないなんて、ああ、そんな関係はごめんだ。大抵の人間はそうみたいだけど、それならば何で魔法がこうして存在するのか、理解に苦しむね。いや、マグルでも魔法族でも関係ないな。そんなのはただの怠慢だ。頼りない音波を伝うよりもっと確かなものがあるって、わかってるだろ。ここだよ。ここ。ね。
 身も凍るような真っ暗な湖の上で朧月に濡れている。君にはそんな光景が似つかわしいよ。別にその手が血にまみれてようが美しくも儚い花を携えていようが、そんなのはたいしたことじゃない。すくなくとも私にとっては。私?そうだな、私はそこまで高尚じゃない。泥の河に埋もれて、その他大勢と一緒にレテの河に流れ込む。うん、これだな。私にとっての死は、肉体の破滅と魂の忘却のセットだし。それに、私は怠け者だから、冷たい試練に生きるより、いっそ……。
 でも君は駄目。駄目ったら駄目。苦しんで苦しんで、狭き門を行って。それは君にしかできないことだから。私じゃ、駄目なんだ。わかってるだろう。人には皆、天職、天命があると昔どっかの聖職者が言った。別に信じてるわけじゃない。けど、君のはまさにそれだ。
 あと、覚えておいて。その艶やかな心臓を奪われることだけは許さないから。誰であろうと──「あの人」であろうと──私であろうと。だから、その時はよろしく。
 変わり者?だとしたら君も相当。だってその変わり者を腕から放さないのは、君だ。
 ──ああ、もうすぐ夜が明ける。






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